みのりの秋から(執筆者:松山大学薬学部教授 天倉吉章氏)

天倉吉章タイトル4007

    実りの秋という言葉のとおり、秋は穀物や果物などの作物の収穫時期(旬)となるものが多い。果実は甘いものや酸っぱいもの等、それぞれ味は勿論であるが、栄養に富み、日々の食生活に欠かせないものである。一方で、果物として食されているものや身近な植物の果実が薬用として使用されているものがある。果実や果皮を薬用とするものもあれば、意外にも茎や葉など、その他の部位を使用するものもある。ここではその一部について紹介する。(ここで薬用とは、日本薬局方収載品をあげる)

 

アケビ

    蔓(つる)性の落葉樹で葉が五枚の小葉からなり、雌雄同株(雌花と雄花が同一の株にある)で花穂の下部にある大きい花が雌花、上部の小さい花が雄花。秋に実をつけ、縦に割れることから開け実、すなわちアケビと命名されたといわれる(諸説あり)。果実は白く甘く、多くの種子を含んでいる。アケビに似て三つ葉のミツバアケビもある。果実は食用とするが、薬用として使用するのは蔓の部分。これを生薬では「モクツウ(木通)」とよび、利尿等を目標に漢方薬に配合される。

未熟果実 果実 モクツウ(生薬)
未熟の果実 果実 モクツウ(生薬)

 

ビワ

    愛媛県はビワの産地として全国3位の収穫量を有し、国内主要な産地としてあげられる。ビワの名は実の形が琵琶に似ていることからこの名がついたとされる(諸説あり)。果実は甘く、秋にスーパー等の店頭にも並ぶよく知られた果物であるが、その葉を生薬「ビワヨウ(枇杷葉)」として消炎等を目標に漢方薬にも用いられる。

図2

ビワ

 

かんきつ類

    愛媛県は国内有数の柑橘生産県なのでご存じの方も多く、今さらではあるがミカンやダイダイも薬として使われる。ミカンの熟した果皮は生薬「チンピ(陳皮)」、ダイダイやナツミカンの未熟果実は生薬「キジツ(枳実)」、成熟した果皮は生薬「トウヒ(橙皮)」の原料となり、健胃等を目的に漢方薬に利用される。

ダイダイ(果実)

ダイダイ(果実)

 

クチナシ

    日当たりのよい山野に自生する他、観賞用で庭木等としても栽培される。初夏に甘い芳香のある白い花を咲かせ、晩秋に赤黄色に果実が熟す。果実が裂けない(口が開かない)ことからその名がつけられたとされる(諸説あり)。このよく熟した果実が生薬「サンシシ(山梔子)」で、漢方薬に鎮静、消炎等を目的に用いられる。

クチナシ(果実) サンシン(生薬)
クチナシ(果実) サンシン(生薬)

 

レンギョウ

    春に葉よりも早く黄色い花を咲かせる。春先に庭木や公園でも黄色く色づいた景気を目にすることも多い。耐寒、耐暑性に優れ、育てやすいため、よく観賞用として植栽されるが、その果実が生薬「レンギョウ(連翹)」となる。漢方薬に消炎、利尿、排膿等を目的に配合される。

レンギョウ(花) レンギョウ(生薬)
レンギョウ(花) レンギョウ(生薬)

◆執筆者:天倉吉章氏

松山大学薬学部教授

コメントは受け付けていません。