健康と観光(執筆者:愛媛県立中央病院 山岡傳一郎氏)

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今日から、数回にわたり『東洋医学の話』の話をさせていただきます。

東洋医学では常に自然が重視されます。
例えば、「風寒暑湿燥火」は、自然環境の代表的な変化で「六気」といわれます。
風邪をひくのは、この「風邪(ふうじゃ)」を引き込んだという意味です。中風(ちゅうふう・ちゅうぶ)ともいいます。

しかし、中風には二つあり、外からの風(≒ウイルス)にあたると、「風邪をひき(外中風)」、身体の中からの風(≒血管閉塞・出血)に中たると、「中風(内中風)」つまり、脳血管障害になることをいいます。ただ、外中風も内中風も一過性に過ぎ去る、風(かぜ)のような性質をもった病態であることは共通しています。

「お母さんの風邪療法」

さて、みなさんが風邪をひくと、お母さんは、どんなにして治して(ケア)してくれましたか。

想像してみてください。

ある人はこう言うでしょう。「母は、あたたかいスープ(生姜湯、・・・・たまご酒、)をのませてくれた。すると背中から汗がジワーっとでてくる。その汗を丁寧にしっかり拭いてくれた。そして、温かい布団に、私をやさしくねかせてくれた。一日で、または、二三日で風邪は治った。治ってしまうと、意外に、風邪をひく前よりもなんとなく体調がいい。母へ「ありがとう」とは言わなかったが、こころの片隅に感謝の気持ちが残っている。」

これが古代から伝わるケアの原理であることは、これから話をすすめるうちにご理解いただけると思います。

芯から温めるのが秘訣

身体を温めるという行為は、自然治癒力を発揮させる最も有効な行動です。

風邪をひいいてしまい、寒気を感じるような場合、とにかく温めて休むこと。汗を上手にかいてもらい、丁寧に拭き取って冷やさないこと。そして十分な休養をとることです。
もちろん、このような時に、葛根湯や桂枝湯を飲むのも有効です。

つまり、母というものは、「子どのも中にある、内部環境としての自然の摂理の観察に長けており、その自然の治癒反応の存在を確信していたと」のではないだろうか考えます。
このような、母親の感性は古代にもあったのではないでしょうか。古代から人々は丁寧に自然を観察していたというのが、今回の話で一番強調したかったところです。現代の私たちは、いろいろなことが便利になりすぎたため、丁寧に自然を観察する手間をかけなくなりました。便利になった一面で、この自然の摂理を観察することが下手になっているのです。

結び

東洋医学には、古代の人々の知恵が残っています。
現代の私達が、「便利さを得ることで、本来のもの(自然)を失ってしまった」ことを気づかせてくれるのもこの医学の中に潜んでします。
これから徐々に、その宝物を紹介していきたいと思います。


◆執筆者:山岡傳一郎氏

愛媛県立中央病院

漢方内科 主任部長

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