身近なくすり(2)(執筆者:松山大学薬学部教授 天倉吉章氏)

天倉吉章タイトル

    カレーといえば夏場の食べ物のイメージがあるが、カレーうどんや最近ではカレー鍋など、身体の温まる冬の料理としても食卓に並ぶ。老若男女問わず、カレーが嫌いという人はあまり聞いたことがなく、日本の国民食として定着している。
    子どもの頃、晩御飯がカレーライスと聞くと喜んだもので(少なくとも私はそうだった)、普段食の細かった私だが、カレーとなると「おかわり」したのを思い出す。当時は何も考えず、カレーの美味しさだけに魅力を感じていたように記憶する。カレーに何が入っているかなど、スパイスの存在すら考えたことないように思う。
    カレー粉の中身を少し調べると、実は薬(くすり)が材料として多く入っていることに気付く。カレースパイスを調べると、ターメリック、クミン、コリアンダー、レッドペッパー、ガーリック、クローブ、フェンネル、カルダモン、オールスパイス、シナモン等のスパイス名があがってくる。

カレースパイス

 

    ターメリックは黄色い生薬ウコン(鬱金)のことで、カレーの色付けや風味付けに使われる代表的材料である。主な薬効として、健胃や利胆作用(胆汁分泌を促す)がある。ガーリックはショウキョウ(生姜)、クローブはチョウジ(丁子)、フェンネルはウイキョウ(茴香)、カルダモンはショウズク(小豆蒄)、シナモンはケイヒ(桂皮)と、これらは国が公示している薬の品質規格書「日本薬局方」に収載されている薬でもある。それぞれの薬効をみると、その多くが胃薬に使われるものであることがわかる。またこれらは漢方薬に使われる生薬でもある。だから、漢方薬は、例外もあるがスパイスの集合体といっても過言ではない。スパイスは世界中で料理に用いられており、それらの多くが健康維持に役立っているとみられる。
    食欲増進や消化機能増進の薬が集まったカレーであるが、そんなことを意識して食している人は少ない。その香り、味に魅了し食べている人が大半である。思えば、夏バテや疲れて食欲のない時にカレーを注文する人も多い。その香りは確かに食欲を増進させる。香りや味だけでなく、食することで消化機能を増進させることも期待できる。このように、食の三機能(栄養機能、嗜好機能、生体調節機能)をすべて備えたカレーのパワーは本物かもしれない。


◆執筆者:天倉吉章氏

松山大学薬学部教授

 

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