ハスの花の下にはレンコンがある。(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)

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学生時代の修学旅行でお寺巡りをしていた時“お釈迦様や仏様がハスの葉の上に1
座っているのは、泥からハスの綺麗な花を咲かせる事から、どのような状況でも清らかな心を持つ・生きる事の象徴だからです。”と伺った事があります。何だか深く心に沁みたお話しでした。
ハスと言えば、レンコン・ハスの実・ロータス茶…ハスの食材は、それぞれの部分に全く異なる味・風味があって、不思議な食材だな~と感じたので、コラムにしてみました。

 

蓮の地下茎:レンコン

ハスの原産地は中国・エジプト・インド等と言われていますが、はっきり分からない1
ようです。どちらの国もハスの花に宗教的意味がある国ですね。
弥生時代にはハスは日本にありましたが観賞用だったようです。食べられるようになったのは奈良時代もしくは平安時代頃ですが、現在出回っている種類は明治時代初期に中国から来たもの(地下茎が浅く伸び、太いため掘るのに好都合・病気に強く収穫量が多い)を品種改良したようです。
ちなみに食用のハスの花は花つきが悪くて、花の色も多くないそうです(中国種には白い花が多い)。観賞用のハスはレンコンが小さく、収量が少ないですが、花は八重咲きの物や色も色々あります。

幼い頃、母におせち料理の1つ“すばす”を食べながら、そして蓮根の穴から私を覗1
きながら“見通しがきくように、という願いを込めてハスを食べる”と教えてもらった事を鮮明に覚えています。
レンコンの穴は細くても太くても真ん中に1個・周りに9~10個あります。土の中に比べて、泥の中は酸素が少ないため、積極的に地下まで酸素を運ぶために、葉・葉柄・花びらにある穴と連結していて地下茎の通気孔になっているそうです。水上では美しい姿ですが、泥の中で随分、頑張っているんですね。

ハスの根と書いて蓮根ですが、レンコンはジャガイモと同様、根でなく地下茎が肥大した物です。旬は秋から冬(新レンコンは7~9月上旬頃)です。
新レンコンはアクが少なく軟らかく、あっさりしていますが、冬に出回るレンコンは粘りと甘味が増します

レンコンは煮物・揚げ物・炒め物・焼き・酢の物等、色々な料理で楽しめますが、すって団子状にするとモッチリ・すばすはシャキシャキと、調理方法で異なる食感が楽しめますよね。輪切りにするとシャキシャキ感がありますが、乱切りにするとホクホク感が増しますが、繊維の切り方でも食感が変わります。

又、部位によっても味が異なります。芽がついている先の節(小さい節)が柔らかく、離れるほど堅くなります。そのため、一節目は酢の物・それ以下の節(ふっくら丸形)は天ぷらや煮物等、火を通す料理に適していると言えます。そして、一番最後の節(長くて寸胴型)はすりおろして団子にする料理すると堅さの問題を解消します。
スーパーだと、一節毎にパック詰めにされているので、料理に合わせてレンコンの形で選んで購入したら良いですね。
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含まれている栄養素は、ジャガイモのようにでんぷん(炭水化物)が多い食材であることが分かります。また、ジャガイモはビタミンCや食物繊維を多く含む事でも知られていますが、レンコンも負けていない事が分かります。
このでんぷんの多さが、調理方法によって異なる食感が得られるのでしょう。

レンコンの事ばかり考えていたら、ちょっと変わった料理を作りたくなり、右のような料理を作ってみました。1
    1.皮付きのままレンコンに切り込みを入れる。(下は1cmほど残しておく。)
    2.約15分水にさらし、水を切る。
    3.約小さじ1のオリーブオイルを2に垂らし、カレー粉とひとつまみの塩(あれば
        ハーブソルト)・ニンニクのすりおろし少々を切れ目に塗る。
    4.耐熱皿に3を乗せ、220℃のオーブンで約20分焼く。1
    5.一度取り出し、角切りにしたハムを散らし、さらに約5分焼く。仕上げにあら
        びきコショウをふる。
        (周りに野菜を置く場合は、5の時に入れるか、火が通るのに時間がかかる
        食材の場合は4の途中で入れる。)
私は、赤パプリカやプチトマト・芽キャベツを周りに並べてみました。また溶けるチーズを乗せても美味しかったです。
レンコンの水分が飛んで、味が濃縮してとてもおいしかったです。周りに野菜を置くと、非常に華やかになって、人が集まる時のお料理としてもオシャレだなと感じました。

ハスの実

ハスの花の見ごろは7月~8月中旬で、特に朝7~9時が良いです。花の命は1
3~4日で、散った後は実の入った花托(かたく)が約3週間すると肥大し、実が熟します。花托の表面がハチの巣に似ているため“蜂巣(はちす)”と呼ばれていたのが、“はす”になったそうです。

実の皮と芽を取った物がハスの実として料理に使用されます。月餅・最中等の菓子類の中に入れたり、砂糖漬けやチェー(ベトナムの菓子)の具として利用される事もあります。
含まれている栄養素をみると、レンコンと同様にでんぷん質(炭水化物)が多い1
のが分かります。トウモロコシのような食感です。
実を粉末にした中華食材に藕粉(ぐうふん)があり、葛粉のように使用します。

ハス茶:ロータス茶

ロータス茶はもともとベトナム産で日本でもベトナム料理屋さんで味わう事が1
できます。
私はロータス茶の独特の香りが好きなので、蓮花茶を購入して自宅でも楽しんでいます。
ロータス茶には3種類あります。(tr à:お茶 sen:ハス の意味(ベトナム語))
①蓮花茶(tr à hoa sen)
    緑茶にハスの花の香り(厳密にはおしべの香り)をつけた物。
    緑茶を使用しているため、カフェインは含まれている。
    老廃物の排泄・美肌を保つとされ美肌茶として親しまれている。
②蓮葉茶(tr à lá sen)
    ハスの葉を乾燥させた物。ノンカフェイン。少し苦みがある。
    葉に鎮静作用があるとされているため、ベトナムでは不眠症に効くとされている。
    葉のアルカロイド成分が、コレステロール減少・脂肪燃焼がありダイエット茶とも言われている。
③蓮芯茶(tr à tim sen)
    ハスの実の胚芽部分を乾燥させた物。ノンカフェイン。大変苦い。
    安眠効果・リラックス効果があるとされている。

ハスの葉

ベトナムには、ハスの葉で包んで蒸したちまきのような料理もありますが、私が興味を持ったのはハスの葉の構造を応用した技術です。

ハスの葉に落ちた水滴はコロンと転がり落ちますが、葉の表面に粒上の細胞が1
覆っているため撥水性があるのです。粒上の上に水が落ちると、空気の層が含まれるため、転がりやすいという構造です。(ロータス効果
これを人工的に加工し応用した商品が数多くあるのをご存知ですか?
通常、ヨーグルトの容器のアルミの蓋にはヨーグルトがべったりとついていますが、中にはつかない商品が最近ありますよね。あれがロータス効果。ヨーグルトを垂らしてみても、ツル~ン・コロ~ンと流れていきます。
ご飯の木の杓文字はご飯が水をつけて、ご飯をよそわないと、べったりとくっついてしまいますが、表面をブツブツに加工する事で、ご飯がつかない杓文字というのもありますね。
建物の外壁にロータス効果を施して、“汚れない”を売りにした商品もあります。
傘・レインコート等の撥水効果が施された布や撥水スプレーもありますね。

ハスの花のイメージとレンコンは随分異なるような気がしますが、楽しみ方も色々で何だかさらに魅力的な植物であり食材だと感じました。

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ  アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm

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