食育は家庭から ~伝えておきたい行事食~(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)
年越しそば・お雑煮・おせち料理・・・
と年末年始は様々な行事食が詰まっていますね。
ある調査結果によると、行事食を母親に教わった事がある主婦ほど子供と一緒に行事食を作った事があるそうです。
ハレの日だから贅沢な食事だったが・・・
クリスマスの飾りつけは頑張るけど、正月飾りは興味なし…。
いつからそうなったのだろう?とふと考える事があります。
質素倹約が美徳だった頃、日常の食事は質素な食事であり、今のように肉や魚等のたんぱく質が多いおかずが何品も並びませんでした。
ハレの日の食事が社会的に認められた贅沢が出来る食事だった。だからこそ腕を振るった行事食があった。
一方、現在は・・・。
コンビニや外食・中食産業の発達によって、お金を払えばすぐに食べ物が手に入るという環境が日常の食事を変え、ハレの日の贅沢な食事という特別感を薄れさせてしまったのでしょう。
もはや行事食は贅沢な食事という位置づけではないのかもしれませんね。
行事食はおもてなしの心
流行語大賞にもなった“お・も・て・な・し”ですが、私は行事食とは親戚や家族、近所の方々へのおもてなしの心の表れだと感じます。
“もてなす(持て成す)”を調べてみると
・歓迎する。ご馳走する。
・面倒をみる。世話をする。
等があります。
“ご馳走”の語源は“大切な人のために走り回って食材を探し、それを美味しく食べていただけるように自分の時間を他人に与える。“とあります。だから食事後の“ご馳走様”は最高のねぎらいの言葉なのです。
いずれにせよ、人が集まる時に何を一緒に食べるのか。料理をする側は、どのように客人をもてなすのか?というのが行事食の本来の姿のように感じます。という事は、伝統的な行事食でなくても良いのかな。とも受け取れます。
行事食にルーツあり
皆さんのお宅はどのようなお雑煮ですか?
私にとってのお雑煮は、カツオだしの醤油ベースに豚肉+焼かずに入れた角餅+小松菜です。
ご家庭によって具沢山なお雑煮・味噌仕立て・焼餅餅入り・丸餅入り・アン入り餅等があると随分大人になってから知って驚きました。調べてみると、私にとってのお雑煮は母方の祖父の出身地である愛知県がルーツのようです。愛知県のお雑煮はカツオだし+もち菜(小松菜の仲間)+餅のみ。
これは徳川家康が質素倹約を奨励した影響のようです。そこに祖母のアレンジである豚肉が加わったらしいのです。
何とも祖母らしい・・・。我が家のお雑煮ルーツを知って、心がホッコリしました。
和食が無形文化遺産に登録されましたね。
和食=ヘルシーと世界が注目している素敵な魅力あふれる食事・食文化だからこそ、私たち一人一人が大切にしていきたい文化だなと感じます。
母はおせち料理を食べながら幼かった私に、各料理の意味を説明してくれた事を今でも鮮明に覚えています。
子供ながらおせち料理はそんなに美味しい料理とは感じませんでしたが、それぞれの意味・願いを知って食べる事は大切だなと感じながら食べた記憶があります。便利なお節料理のセット販売もありますが、それぞれの作り方は知っていたいし次の世代に受け継いでいきたいなって思うんですよね。
◆執筆者:河谷彰子氏
管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師
日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。