炭水化物を減らし過ぎると・・・

 


血液検査で中性脂肪や血糖値が高い方は、糖分をとり過ぎているケースを多く目にします。
例えば、ラーメン+ライスと1食に炭水化物料理を組み合わせている・主食は常に大盛やお代わりをしている・食後のスイーツやフルーツが欠かせない・砂糖入りの缶コーヒー(微糖であっても)を一日に何本も飲んでいる…。
このような場合は、炭水化物を控えると、内臓脂肪(おへそ周りの腹囲)が減り、さらに中性脂肪や血糖値が下がりやすくなるでしょう。
ただ、炭水化物を減らし過ぎると、様々なデメリットがあります。

① イライラする。

第1の回路 解糖系
糖質(炭水化物)は、肝臓と筋肉でグリコーゲンとして貯蔵されます。(過剰にとると中性脂肪が増え過ぎる。)
脳のエネルギー源は基本的に糖質のため、不足すると低血糖を起こし、集中力低下・無気力やイライラの原因につながります。
砂糖も米も糖質を多く含む食品ですが、腹持ちに違いがあります。砂糖はすぐに血糖値が上がりますが、腹持ちが悪いため、血糖値が直ぐに下がります。この血糖値の急激な増減が、頭痛やイライラの原因になる事もあります。

② 筋肉が落ちる。

第2の回路 糖新生
糖質不足で体内のグリコーゲンが無くなると、肝臓で中性脂肪・筋肉中のたんぱく質・乳酸を原料に糖に作り替えてエネルギー源とします。肝臓の仕事を増やしてしまうため、場合によっては肝機能の数値が上がってしまいます。
また、筋肉中のたんぱく質も利用されるため、筋肉が落ちやすくなってしまいます。筋肉量が減れば基礎代謝が落ちる事になり、結果、リバウンドしやすい身体になってしまうとも言えます。
筋トレをしているから筋肉は落ちないと思っている方は大間違いです。筋トレで傷ついた筋肉を補強するためには、炭水化物とたんぱく質が必要です。炭水化物を抜きすぎた状態で筋トレをすると、効率良く筋肉がつかず、場合によっては減ってしまいます。
たんぱく質の代謝産物は、酸性のアンモニアです。身体が酸性に傾くと、カルシウムを骨にするのを減少させ、さらには尿中のカルシウム量が増え(排泄が増加してしまい)、骨密度が下がり、骨折のリスクを上げる可能性も高まってしまいます。

③ 体臭がきつくなる。

第3の回路 ケトン体回路
中性脂肪(皮下脂肪や内臓脂肪)が分解され、エネルギー源と使用される。
糖質を基本のエネルギー源としたい脳は、中性脂肪を分解したケトン体(アセトン・アセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸の総称)をやむを得ずエネルギー源とします。
この代謝産物であるアセトンが体臭の原因となり、甘酸っぱい独特の臭いがします。
そのため、過度の炭水化物抜きダイエットはケトン体が過剰に作られ、口臭・体臭の原因になってしまいます。

④ 鉄分をとっていても、貧血の原因になる?!


① 十二指腸で、鉄分が吸収され、血清鉄になる。
② 血清鉄が骨髄へ運ばれて、赤芽球内でヘモグロビンが合成され、赤芽球が赤血球に分化する。
③ 赤血球は約120日で老朽化し、脾臓で分解される。
④ 分解された赤血球は、肝臓で貯蔵鉄(フェリチン等)として控えの鉄分となる。
⑤ 鉄は再利用され、必要に応じて取り出されて血清鉄になる。

血液検査で貧血に関わる項目をチェックして、鉄分をとっているのにヘモグロビンの値が低い。でもフェリチンは高いという場合、炭水化物不足が理由の一つにあるかもしれません。
貯蔵している鉄分④が多いのに、⑤を通じて、受け渡しが出来ず、結果②にも行き届かず、結果酸素を運ぶ役割であるヘモグロビンに受け渡せないという可能性があるのです。
アスリートの場合、十分なヘモグロビンが低い(貧血)と、持久力の低下に関わります。実際、ごはん量を見直して少し量を増やしたところ、約1か月で貯蔵鉄であるフェリチンの値は正常になり、血清鉄が上がってきたという事があります。(ヘモグロビンは、その後に変化する可能性がある。)

⑤ 長期間の炭水化物制限は、心筋梗塞や脳卒中になる危険性が高まる。

という調査結果もあります。

炭水化物を減らし過ぎると、想像以上にデメリットがありますよね…
炭水化物を減らすなら…
・糖分入りの飲料を控える。
・1食に2品の炭水化物料理を食べている場合は、1品にする。
・炭水化物を無しにするなら、寝る前の食事のみ。
という程度から始めてはいかがでしょう?

 

◆執筆者:河谷彰子氏
管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ女子代表栄養アドバイザー・サクラフィフティーン女子代表栄養アドバイザー・ユースアカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師・上智大学非常勤講師
日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。
URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm

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