どうしたら身長が伸びるの?の疑問(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)

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子供達から『身長はどうしたら伸びるの?』と質問される事がよくあります。1
私は身長が高い方に出会うと“誰が大きいの?”と質問します。
身長と遺伝的な関連は切っても切れませんが、身長が高い方の話を聞いていると、遺伝的要因で高い場合もありますが、そうではない場合には共通点があるようにも感じます。
遺伝を超える何かは何なのか?について考えてみたいと思います。

 

とにかく寝ている!

遺伝的に身長が高い訳ではないのに、身長が高い選手の中に多く聞かれるのが“子供の頃から2
夜更かしはしなかった。”“よく寝ていた”という話です。
中には、小学校高学年になっても7時半には寝ないといけなかった方もいらっしゃいました。
寝ている間には成長ホルモンが多く分泌されるため、寝る事は大切だという話をよく耳にしますが、やはり“寝る子は育つ!”なんですよね。

あるJリーグチームでは中学生の時期に手根骨(手首近くの骨)のレントゲンを2
撮り、骨端線(骨の端の隙間)から将来の身長を測定しています。骨端線がある内は、身長が伸びます。骨端線が残っている年代は男性17~18歳・女性15~16歳位で、個人差もあります。

ある元Jリーガー(身長は170cm位)が私にコソッと教えてくれた事があります。
『僕の身長が高くない理由は分かっているんです。中学3年生から高校生にかけて、寝ずに夜遊びをしてたんですよね…寝るって大切だって実感しています。』
その方は、中学生の頃に手根骨のレントゲンを撮って、将来の身長を教えてもらっていたのですが、高校2年生になっても予測された身長に近づいていなかったため、再度レントゲンを撮りに行ったところ、ドクターから『可能性が潰れちゃったね…』と言われたそうです。つまり骨端線がなくなり、身長が伸びる可能性がなくなってしまっていたのです。

私の思い出ですが、幼稚園の入園式の時に園長先生が『8時には寝ましょう。』2
と話をしていた事を覚えています。というのも、母が頻繁に『園長先生が8時って
言ってたでしょ。』と寝ようとしない私に声をかけていたからです。

日本人の睡眠時間は世界各国と比較しても少なさのトップクラス。
年代別に適切とされる睡眠時間の目安は色々ありますが、私は小学生までは10時間は寝ていて欲しいなと思います。

 

実は、人と身長差をつけるには、思春期前が大事。

思春期とは“第二次性徴の発現の始まりから成長の終わりまで”ですが、1
男子なら声変わりが始まる前・女子なら胸が大きくなり始める前までが勝負という事です。
というのも、成長期の身長の伸びは、個人差が少ないためです。(男子:中学生~高校生で20~30cm・女子:小学校高学年~中学生で12~25cm)
第二次性徴が早く起こってしまう理由の1つとして、体脂肪が多い事が関連しています。小さい頃にポッチャリさんだと、人より成長が早いように感じますが大人になって比較してみると、それほど大きくないという方を見かけた事はありませんか。
女子の場合でご説明すると…
体脂肪17%前後で初経を迎えます。身長の伸びのスピードが止まってきたなと思った頃に、ちょっと体脂肪が増えてくると初経がやってきますよね。つまり、幼い頃のポッチャリは第二次性徴が早くなる可能性があり、身長の伸びる可能性を妨げると言えるのです。
(初経の目安は10~16歳です。あまりにも遅いという場合は、体脂肪が少なすぎる場合や、それ以外の原因が考えられるので、婦人科を受診する事をお勧め致します。)
つまり、思春期が来るのを早くしないためにも、体脂肪を多くさせ過ぎない事がポイントとなります。

 

お菓子が食事の一部になっている。

2つ目によく聞く話に、子供の頃からのお菓子の習慣についてです。1
菓子パンでないパン・焼き芋・ヨーグルト・牛乳・おにぎり・フルーツ等、食事の一部の一部になる物をおやつとして食べていたと話す方が多いように思います。
中でも乳製品を間食にとっている方が多いように思います。中には、毎日1リットルの牛乳を飲んでいたという方もいらっしゃいます。
骨作りにはたんぱく質・カルシウムが欠かせません。
(乳製品の目安量については、https://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/133/こちらをご覧ください。)

一方で、砂糖・塩分のとり過ぎや、保存料として使用されているリン酸塩は、カル1
シウムを骨にするのを阻害してしまいかねません。つまり、甘いお菓子やスナック菓子は身長を伸ばす可能性を邪魔してしまうかもしれないとも言えるのです。いわゆるお菓子ではなく、食事の一部となる補食が栄養バランスになり、骨作りに貢献するのでしょう。
(お菓子についてはhttps://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/1122/こちらもご覧ください。)

カルシウムには、年齢によって上限値が定められています。1
(18~69歳の男女:2500mg それ以外の年齢では定められていません。)
牛乳やヨーグルトに含まれているカルシウム量は100g≒100mgです。目安量の乳製品とバランスの良い食事で十分にとれる量です。乳製品をたくさんとる事は、ある意味お菓子などの余分にとり過ぎてしまう糖分や脂質を控えてくれるとも考えられます。
だから“牛乳を飲むと背が伸びる”というのは、ある意味間違いではないのかなと感じます。

190㎝近くあるJリーガーが『父は肩サイズ・母は胸サイズ・お婆ちゃんはヘソサイズなんです。』と教えてくれて、大笑いしたことがあります。さらに『小さい頃は、アレルギー体質だったので、母は食事に随分と気を遣ってくれました。』と話してくれました。保存料をなるべく使用しないような食事にしてくれたそうです。その選手の食事内容を見てみると、朝食から納豆・しらす干し・ヨーグルト等を自ら選んでおり、乳製品以外にもカルシウムが多い食事を好んで食べていましたよ。

身長を伸ばすために、食事は勿論大切ですが、幼児期からの生活習慣が、身長を伸ばす可能性を伸ばすのではないのかなとつくづく感じます。だからこそ、身長を伸ばす可能性を最大限引き出してあげるのには、親の関与が大切なのではないかなって思うんですよね。

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ  アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm