噛む事ことは歯並び・発音に関連する!(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)

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“しっかり噛むと歯並びが綺麗になる。”と歯学博士の友人が教えてくれて、非常に1
驚きました。
小学生の頃、歯の矯正をした事があります。上下の第一小臼歯を抜いて、定期的にギリギリと閉められる器具を装着し痛い思いをしました。あんな痛い思いをせずに歯並びを良くする事が出来たのなら…と思うと、詳しく知りたくなり色々と教えていただきました。

歯並びを良くする方法としては、ざっくり2つの方法があります。
噛む刺激によって顎の成長を促し、歯が綺麗に生えるスペースを作る方法と、顎と歯のバランス不足のためスペースを作ってあげないといけない方法です。今回、記載したのは前者にあたります。

 

正しく噛むようになるための第一歩は離乳食から

離乳食は大人と同じ物を食べる事が出来るようになるための練習です。1
つまり舌や口の動きや多くの神経や筋肉の連携プレーがとれるようになるための練習期間です。
赤ちゃんのおっぱいの飲み方は、大人が飲み物を飲む方法とは全く異なります。
赤ちゃんの舌は乳首を抱え込むようにして(外側はせり上がり、舌中央部を凹ませ、乳首を載せて)います。赤ちゃんが乳首を吸う(吸綴)と、乳頭部は口の中の随分奥の方まで入っているのがイラストから分かるでしょう。そして舌の波動運動によって、乳首・乳頭を圧搾・吸引し空気と共に、そのまま飲み込みます。だからミルクを飲んだ後は、ゲップをさせる必要があるんですよね。

大人の場合、食べ物を飲み込むまでには食べ物を口の中に送り込み⇒1
噛み砕き⇒バラバラになった食べ物を口の中でまとめて飲み込む
という動作が必要です。
赤ちゃんは離乳食の時期に、これらに必要な筋肉を鍛えています。しかし…
食べ物を上顎につけるようにあげてしまうと、食べ物を奥に送り込む筋肉が鍛えられません。

スプーンの先に食べ物をすくい、赤ちゃんの下唇に軽く乗せて、上唇で取り込む1
動作を待ってあげましょう。取り込んだら、スプーンを水平に引き抜きます。
柔らかいタイプのシリコンスプーンを使用する際は注意が必要です。与える際に、食べ物を上顎になすりつけやすいため、赤ちゃんが上唇を使って食べ物を取り込む動作をせずに育ってしまいます。

さらに友人はストロー付きのマグの使用について間違っていないか気になっていると話していました。
ストローが口に入る部分が長いと、子供は乳首を吸うような方法で飲み込んでいる可能性があるので、正しい筋肉の使い方を習得できないのではないかと気になっていると言うのです。蓋から出たストロー部分を1~2㎝に切って使うのがお勧めだそうです。

 

正しい噛み方が美しい歯並びを生む。

友人がくれたパンフレットに興味深い事が書かれていました。1
(編集・発行 床矯正研究会 床矯正・矯正治療のバイオセラピー食育より)
・縄文人と現代人の歯並びを比べると、縄文人の奥歯は前から見ると真っ直ぐ立っているのに対し、現代人は内側に倒れているため、歯が生えるスペースが狭くなっている。これが歯並びが悪くなりやすい理由の1つ。
・縄文人の子供も内側に倒れているのですが、しっかり噛むという動作が成長と共に歯が真っ直ぐ立ってくる。
“噛む回数”“噛む力”“奥歯でのすりつぶし”が現代人には不足
しており、成長期の内に獲得する事が良い歯並びにするポイントだそうです。

前歯の永久歯が生えてきたときは、歯の先端がギザギザしています。そして使っている内にギザギザが無くなってきます。
下の永久歯が生えて2~3年経っているのにギザギザが残っているという事は、上下の歯を使って噛み切る動作をしていない等、正しく使われていないと考えられるそうです。
子供が食べやすいようにと食材を小さく切る事は、ある意味優しさではないのかもしれませんね。

 

正しい舌の位置が正しい発音を生む。

正しい舌の位置は以下の状態です。1
① 舌の先が上の前歯の裏に付いている。
② 舌の広い部分が上あごに軽く付いている。

口がいつも空いていると舌が下がってしまいます(低位舌)。(低位舌の症状の1つは、舌にギザギザと歯の跡が付いている。)低位舌だと舌が付いている骨の位置が変わり、周りの筋肉のバランスが崩れてしまい、上あごが狭くなって歯並びが悪くなる要因の1つになります。1
上下の歯を噛み合わせた時に、前から見て隙間が出る等の症状がある場合は、特に舌が前に出やすく、噛み合わせに影響します。
長い事指しゃぶりをしていたいり、タオルを噛む癖がある場合にも出てきやすい症状だそうですよ。

お子様の発音が気になるという場合や、かみ合わせが深い(奥歯を閉じると、下の1
前歯がほとんど見えない)場合も発音に影響が出る事にもなり、正しく発音をするために必要な筋肉がまだ鍛えられていないからかもしれません。
これらを改善するトレーニングは色々あるようなので、是非一度歯科医に相談されてみてはいかがでしょうか?
友人は右表に代表される発音が5歳を過ぎてもある場合は治療対象になり得ると話してくれました。
下記のチェックシートをご参考にしてみてください。
(ご相談は、古平衣美歯学博士・臨床心理カウンセラー emilyent@i.softbank.jpまで)

<古平衣美さんのプロフィール>
1997年 昭和大学歯学部卒業
2001年 昭和大学(現)顎口腔疾患制御外科講座にて学位取得
2010年 井本歯科クリニック
2012年 Emilydentカウンセリングルーム設立 

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カムカム料理で、積極的に噛んでみよう!

噛む事を意識するというと“スルメ”をおやつに!と想像される方もいらっしゃるでしょ1
うが、噛むための筋力が十分でない場合は、疲れてしまって食べる事が出来ず、トレーニングになりません。
前歯を使って噛み切り、奥歯を使ってすりつぶすという事を意識させた料理を意識的に作ってみませんか?
スペアリブ・手羽先等、骨付きの肉は前歯を使って噛み切る動作が積極的に入る料理です。
食感の異なる物が入ると、よく味わおうとしてよく噛もうとする動作につながりやすくなります。ハンバーグの中にミックスベジタブルやレンコン・ごぼう等を入れる・炊き込みご飯にする・サラダにナッツや豆類を入れる・納豆にちりめんじゃこや刻んだたくあんを入れる等がその例です。
いつも作る料理を、いつもより大き目に具材を切るのも1つです。

今年も早い物で、あとわずか!おせちの用意は順調ですか?
煮物の大きさを少し大き目に切る事で、カムカム料理にしてみませんか?

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ  アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm