酒粕漬け(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)
疲労回復効果あり!鶏胸肉の味噌粕漬け
11~3月頃は日本酒が作られる時期ですが、この時期は酒粕も多く
売られていますね。最近では身体に良いという理由のためか、スーパーでは1年中酒粕が売られている所も多いように感じます。
皆さんは酒粕をどのような料理に使いますか?
甘酒・粕漬け・粕汁・奈良漬・アイスクリーム等のスイーツ…
鶏ささみ・鶏胸肉等、脂肪分が少なくてパサパサしてしまうお肉でも、味噌粕漬けにすると、と~っても柔らかく美味しくなります。言ってみれば、白身魚が凝縮したような食感です。
酒粕に含まれている麹菌がデンプンをぶどう糖(甘味)に、たんぱく質は旨味成分の1つであるグルタミン酸等のアミノ酸に分解してくれる効果です。
先日、あるアスリートが『毎朝、鶏胸肉を焼いて食べています。』と話していたため、この味噌粕床をプレゼントしました。早速鶏肉を漬けて食べてみたそうです。『美味しかったです。西京焼きのような味になるんですね。』と喜んでくれました。
・材料
(味噌粕床)
酒粕:味噌 2:1~3:2
日本酒(酒粕が板粕の場合) 少量
みりん お好みで
鶏胸肉
・作り方
1. 酒粕と味噌を合わせてフォークで良く混ぜて、味噌粕床を作る。
板粕を使用する場合は、少量の日本酒に一晩つけて味噌位の固さにしてから味噌と合わせると良い。
甘めがお好みの場合は、みりんを少量加えると良い。
2. 鶏胸肉を厚めのそぎ切りにする。
3. 保存容器もしくはビニール袋に1と2を入れて漬け込む。(最低でも一晩は漬け込む。)
4. グリルで両面を弱火で焼く。(周りの味噌粕は軽く水で流しておくと、焦げにくい。)
・味噌粕床は2回位使う事ができます。
・最低でも一晩は漬け込みましょう。数日漬け込んで冷蔵庫保存してもOK。
・豚もも肉など、柔らかい肉の薄切りを漬けると柔らかくなりすぎてしまいます。使用する際は、厚めにすると
良いでしょう。
・食材に付いている味噌粕は、軽く水で流しておくと焦げにくいです。
・加熱方法はフライパンを使用してホイル焼き・クッキングシートを使用して電子レンジで加熱しても美味しく
出来上がります。
鶏胸肉やささみで疲労回復!
疲労回復の成分として“イミダペプチド”が注目されています。イミダペプチドは
たんぱく質の1種ですが、特に鶏胸肉に多く含まれています。
低脂肪で高たんぱく質の鶏胸肉は太りづらくて疲労回復も期待できる食材と言えそうです。
必要な量をとるには、1日に鶏胸肉を100g程度食べると良いとされています。
さらに回遊魚であるカツオの尾の部分にも多く含まれています。戻りガツオの時期ですね~。
酒粕って
お世話になっているある酒蔵のご主人に教えていただいたお話です。
お米の中心には旨味、外側は雑味が多く含まれているため、原料の米は作る日本酒の種類によって磨き分けます。普通酒(いわゆる大衆酒)は玄米より20~30%磨くのに対して、大吟醸は50%以上(その酒蔵は玄米から35%の大きさまで)磨きます。
磨いた米を蒸して麹を植え付け、1ヶ月ほど発酵させます。そして酒粕と日本酒に分けます。
板粕になっている酒粕は、屏風状になった布の中を機械で圧力を加えて絞られます(板粕)。一方、大吟醸は機械で絞られず、大きな布巾で自然にゆっくりと日本酒と酒粕(吟醸粕)に分けます。吟醸粕は完全に絞り切らないため、板粕に比べて酒成分が多く残ります。さらに米の磨き方の違いや低温でじっくり発酵させるため酒粕にも格別の香りが残ります。
その他に踏込粕があり、酒粕を圧縮して空気を抜き夏まで熟成させた物です。熟成させている分、色も旨味も濃厚で、奈良漬や粕漬けとして出回るそうです。
どの酒粕にもそれぞれ特徴がありますが、お好みは人それぞれです。
それぞれの酒蔵によって、日本酒の味が異なるように酒粕にも特徴があります。遠方から酒粕を購入するためにお見えになる方もいらっしゃるそうです。
酒粕・ごはん(精白米・玄米)・日本酒(純米酒・純米大吟醸)を比較すると以下のようになります。
代謝の潤滑油になるビタミンB群が多く含まれている他、食物繊維も多いと言えます。ただし、粕汁の場合であれば、一人当たりの量は30g程度なので、それほど栄養的な効果を期待する必要はないと考えます。
酒粕にはお肌に対して美白効果・保湿効果がある、脳梗塞予防・動脈硬化予防・血圧低下・がん予防・骨粗鬆症予防等に良いという情報もあります。
私的には、料理に旨味をプラスしてくれる食材という位置づけで良いのではないかと感じています。
◆執筆者:河谷彰子氏
管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師
日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。