旬の食材(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)

河谷彰子タイトル53

“買い物で同じ食材を買ってしまうので、同じような料理になってしまう・・・1
野菜は何を買ったら良いですか?”と相談をされる事があります。
私は“野菜はお店の手前で山積みになっている物・安売りしている物を買えば良いですよ。”と答えます。
山積みになっている野菜は旬の野菜である事が多く、季節によって少しずつ変化していくため、結果、1年を通して色々な野菜を食べる事につながるからです。

旬の食材の良さって?

旬の食材は何故良いの?と質問されたら、何と答えますか?一般的には下記の理由が挙げられます。

・価格が安い。
   収穫量が多い・光熱費等に費用がかからない。
・生育に適した環境下で育っているため、余計な肥料も要らず病害虫も少ない。
   旬の食材は安全という言い方をされる事もある。
・栄養価が高い。
   例:ほうれん草は冬が旬。収穫時期によりビタミンC量が異なる。(夏20mg・冬60mg)
・身体に必要な物を補給してくれる。
   例:夏は暑さから身を守りたい=身体を冷やしたい。水分を多く含む野菜が夏には多い。
・食糧自給率アップになる。

茄子の露地栽培での収穫期は7~10月です。1
茄子は高温多湿を好む夏野菜です。昼夜の温度差が大きくなる晩夏から初秋は、とくに美味しい時期です。
“秋茄子は嫁に食わすな” ということわざがありますが色々な意味があります。
 ① 旧暦で秋は8~9月を指しますが、この時期の茄子は皮が薄く実がしまって美味しいため“憎たらしい
   嫁には、美味しい茄子を食べさせるな”という嫁イビリの意味。
 ② 涼しい時期に水分の多い茄子は身体を冷やすから、大事な嫁には食べさせるなという意味。
 ③ 秋茄子は種が少ないので、子種が出来なくなるから食べさせるなという意味。

焼きナス・麻婆茄子・茄子カレー・揚げ茄子・天ぷら・漬物・なすミート・ラタトゥイユ…
どれも夏の暑さを吹っ飛ばしそうな料理ですね。

トマトも夏が旬の野菜ですが、とあるスーパーで、アメリカンフェアーと題しアメリカ1
産のトマトが大量に陳列されていました。すぐ脇には国産のトマトが…価格は少しだけアメリカ産が高いのですが、¥100も違いませんでした。
アメリカから日本への輸送費を考えると…輸送中の病害虫対策に何かしているのではないか…鮮度はやっぱり国産の方が良いですよね。
色々考えると、トマトを育てるためのコストに大きな違いがあるとしか考えられません。
国土の広さの違いもありますが、私はやっぱり国産の物で旬の食材を選びたいなと思います。

 

旬でなくても、良い事あれこれ

一年間、店頭に並んでいる食材に“カボチャ”があります。1
収穫のピークは夏ですが、食べ頃は秋から冬にかけてです。
某食材流通業者のバイヤーの方が、こんな事を教えて下さいました。
美味しいカボチャを選ぶポイント(切ってあるカボチャの場合)
 ① 種が大きい物
 ② 皮の近くまで黄色くなっている物
 ③ 果肉の色が濃い物(品種によって差がある)が良い。

さらに、こんな事も教えて下さいました。
9~12月にカボチャを買うのであれば、国産・中でも北海道産が美味しい!
理由は、カボチャは収穫してから2~3か月寝かせてでんぷん質を糖化させると美味しくなるのですが、収穫後の保存は寒い方が良く、北海道の気候は糖化に適しているからです。
国産であれば、十分にでんぷんが詰まった状態で収穫され、ポストハーベストは不使用です。
一方、外国産は輸送中に痛まないように未熟で収穫させるため、でんぷん量が不十分で収穫される上に、輸送の際に低温を保っていない環境も多いため、国産に比べて味が落ちるのだそうです。さらにポストハーベストを使用している場合もあるそうです。

春先と冬前のトマトは密度の濃い、美味しいトマトになる!
冬の葉野菜や果菜類の味は全体的に濃くなります。理由は低温の環境下で生育期間が延びる事により、野菜自体の新陳代謝が落ちるためです。分かり易いのが寒締めほうれん草(ちぢみほうれん草)です。
葉物は厳冬期になると凍らないようにしようと、細胞内の糖分を増加させるため美味しくなります。12月中旬以降で東北地域が産地の寒締めほうれん草が特に美味しいそうです。

トマトの花から収穫までの期間は夏だと30~50日なのに対し、冬は、その倍です。1
冬のトマトは低温でゆっくり育つ(植物内に水分以外の養分が蓄積される時間が長いため、濃い味になる)事により、細胞自体が緻密になり、密度の濃いトマトになる。トマトが美味しくなる日照量や温度がマッチする時期は春先(3月~5月上旬)と冬前(11月下旬~12月初旬)だそうです。

食材から旬をあまり感じる事がないという事は、いつでも欲しい食材が手に入る(入りやすい)という事ですね。
便利ですが、旬の食材には、その時期に合った料理が紐づいています。料理・味・見た目から季節を想像できるような食卓は素敵だなと感じるのですが、皆さんはどのように感じますか?
最近では、冬にトマトやキュウリを見ると身体が冷えると私は感じるのですが、それは身体が“今は必要な食材ではないよ。”と言っているのか、食材から夏を感じているのか、どちらかは分かりません。これを年の功というのでしょうかね。。。
一方で、寒い時期のトマトやナスも気になります。
食材の旬を知っていれば、料理のアレンジにも幅が出てきそうだなと感じますが、皆さんはどの位旬の食材をご存じですか?

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ  アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm