運動は無理なく・楽しく・継続して実施が大切(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)

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『年齢のせいで太りやすくなった。』と働き盛りの年代の方に食事カウンセリングを1
していると言われる事がよくあります。私は“そうかな~?”と感じます。
年齢がどの位の影響があるのか?歳と共に、基礎代謝はどの位変化するのか?という事についてお話したいと思います。

 

若い頃と比べると、基礎代謝は200kcal前後の違いである。

基礎代謝とは、簡単に説明す1
ると“黙っていても消費されるエネルギー量”です。
年代別の基礎代謝量を比較すると(表参照)、体重当たりの基礎代謝基準値は1~2歳は70歳以上の3倍近く高い事がわかります。(しかし、体重が異なるため、1日当たりの基礎代謝量は70歳以上の方が大きくなります。)
1日の基礎代謝量を比較すると、男性は15~17歳・女性は12~14歳で最大となり、その後は加齢と共に下がっていきます。これは徐脂肪量(筋肉量・内臓量・骨量)の低下(特に筋肉量)と基礎代謝基準値の低下によるものです。しかし、50~69歳と基礎代謝が最大になる年代を比較すると、1日で男性は180kcal・女性は250kcalのみの違いという結果です。
200kcalというと、コンビニのおにぎり1個分・メロンパン1/2個・ジュース類400ml…
さて、加齢により代謝が落ちたから、太りやすくなったり、コレステロール・中性脂肪・血糖値が上がってしまったのでしょうか?

筋肉の安静時代謝は13kcal/kg・日

筋肉量が多いほど、安静時代謝や運動によるエネルギー消費量は大きくなります。1
脚には全身の約25%、脚+お尻には約35%の筋肉が詰まっています。また、20歳代前後と50歳前後を比較すると、腹直筋(お腹の筋肉)は約25%、大腿四頭筋は約15%減少するという研究結果があります。
ロコモティブシンドローム(運動器症候群)にならないためにも、筋肉量は少しでも落ちないないよう運動を実施する必要があります。また若いうちに、貯筋しておく事も大切です。
しかし、筋肉の安静時代謝量はたったの13kcal/kg/日です。ウエイトトレーニングをしても短期間に筋肉量が急増するわけではありません。また筋肉量が増えたとしても1kgの増加で+13kcalです。
200kcalを消費しようと思うと、ウォーキング1時間10分・階段昇降25分…

運動は加齢による筋肉量減少を少しでも食い止めるためにも、ロコモティブシンドロームを予防するためにも、リバウンドしないダイエットのためにも実施した方が良いのですが、運動をしたからと言って、急激に代謝が高まったり、体重が落ちる事を期待してはいけないという事です。

食事7~8割・運動2~3割で続けられる方法を見つけよう!

あの頃のあの体重に戻りたいのであれば、あの頃の生活(運動習慣・食生活)に1
戻せば良い。一番かけ離れてしまったのは何か?今の生活で何なら実施しやすいのか?という事を考えましょう。とカウンセリングでお話しする事があります。
中には、メディアや周囲の人からの勧めで“血圧に良い!”という商品を取り入れてから、“血圧は下がったが、血糖値や体重が上がった。”というような方もいらっしゃいます。
また、1食置き換えダイエットをしてみて体重は減少したけれど、コレステロールの値は全く改善しなかったという方も多く目にします。
ずっと続けられる食生活や運動習慣を見つける事が健康の秘訣になると感じます。

私の恩師である筑波大学教授である田中喜代次教授は“若さを保つ(若返る)ためのポイントとして、食事7~8割・運動2~3割を目安に実施すると良い。”とお話しされていました。また、そのポイントは以下の通りです。
・食生活に注意する。
・身体をよく動かす。
・血圧を正常に保つ。
・コレステロールや中性脂肪を正常に保つ。
・太らない。

年齢と共に変化する身体の変化もありますが、それ以上に自分で何とかできる食習慣や運動習慣があるのではないでしょうか。
スポーツの秋!楽しく感じる事ができ、続けられそうな運動を見つける事で、若さを保ってみませんか?

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ  アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm