七夕とそうめん、そしてアスリート(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)

河谷彰子タイトル99

近所の子供たちが、短冊やお飾りが付いた笹を持って幼稚園から帰るところに1
遭遇しました。
そういえば私も写真の頃、七夕が近づくと幼稚園で“たなばたさま”の歌を歌ったり、短冊に願いを書いたり、七夕飾りを作ったりしたものです。
そして“織姫様と彦星様は、今年は会えるかな?と晴れると良いな~”と願っていました。

五色の短冊には、意味がある。

“笹の葉、サ~ラサラ 軒端に揺れる~”から始まる“たなばたさま”の歌ですが、1
竹でも笹でも良いようです。
どちらも、天に向かって真っすぐ伸びる力強さに生命力を感じさせ、葉は殺菌力が強く厄除けの力があるとされています。身体を清める際に笹を使用する等、厄払いの儀式にも用いられます。また風にそよぐ時のサワサワ・サラサラという音が神を招くとして、精霊(祖先の霊)や神様が宿ると考えられています。

“たなばたさま”の歌詞にもある“五色の短冊”ですが、古代中国の“五行説”に由来しています。元々は中国で裁縫の上達を願う女性が針に五色の糸を通した物を飾る習慣があったそうです。これが奈良時代の日本に伝わり、江戸時代になると字の読み書きが上達するようにという願いから、五色の短冊に変化したそうです。
(そういえば、鯉のぼりの五色の吹き流しも、五行説からきていましたね。https://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/3358/
 
里芋の葉に溜まった朝露を集めて墨をすり、短冊に詩歌を書くと字が上達するという言い伝えがあります。
(里芋の葉は、神様から授かった点の水を受ける役目があると考えられていた。)

五色の色は“青・赤・黄・白・黒”です。また、全てをまとめる色として、古くから最も高貴な色とされる紫も使用されるようになり、その代わり黒は使われなくなってきたそうです。色によって、書く願い事に違いがあるらしいですよ。

皆さんは、何色の短冊に願いを託しますか?
私は決められないので、紫にします。

青:徳を積む・成長に関するお願い事
赤:父母・祖先への感謝
     長生きや病気の回復に関するお願い事
黄:人間関係を良くするお願い事
白:義務や決まりを守る
     禁酒や禁煙等の制限に関するお願い事
黒:資格取得や成績アップ等に関するお願い事

短冊以外の七夕飾りにも意味があります。

吹き流し:織姫さまのように機織りが上手になりますように。
神衣(かみこ 紙の人形・着物):裁縫が上達しますように・生涯着る物に困らないように。
ひし形つなぎ:裁縫が上達しますように。
提灯:織姫と彦星に明かりをささげるための飾り。心を明るく照らしてくれますように。
千羽鶴:長寿のシンボル。長生きしますように。
投網・綱飾り:大漁でありますように。幸せをつかめますように。
巾着:金運が上がりますように。商売繁盛しますように。
屑籠:お飾りを作った際に出た紙くずをかごに入れて飾る。整理・整頓・物を大切にする
         という意味がある。
星飾り:星に皆の願いが届きますように。
輪飾り:皆の夢がつながりますように。
菱飾り:天の川の星をイメージした飾り。
織姫様と彦星様:二人のように永遠に愛が続きますように。

七夕の行事食”そうめん”

古代中国の皇帝の子供が7/7に無くなり、その後、熱病が流行ったため、病除け1
として、その子供が好きだった策餅(さくべい)という菓子をお供えしたそうです。この故事に因んで、中国では七夕に“策餅”を食べる風習が生まれたようです。(策餅:小麦粉と米粉を練り、塩を加えて縄状に細長くねじり、乾燥させたもの。茹でたり、揚げて食べるという説もある。)

平安時代の日本では、このお菓子を“むぎなわ”と呼んで、七夕に食べていたようです。

その後、江戸時代には、七夕の時には“そうめん”が供えられるようになったようです。
“そうめんが天の川に似ているから”“そうめんが織姫の織り糸に似ているから”等の説があるようです。
いずれにせよ“七夕にそうめん”は無病息災を願ったものです。

アスリートにとって”そうめん”は、試合前にも良い。

アスリートも運動しない方でも、エネルギーの約60%は炭水化物が基本です。
(アスリートの食事は、運動をしない人と同じ https://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/2812/ 参照)

アスリートで、特に走る事が多い種目は必要なエネルギー量が増加するのと共1
に、主食量の確保が大切です。そのため、どのような時でも基本的に米、2品目の主食として麺料理がお勧めです。麺料理選びにこだわるとしたら、どのように考えたら良いのでしょう?

小麦粉(強力粉)から作った麺:そうめん・冷や麦・うどん・中華麺
蕎麦粉から作った麺:そば(小麦粉を含む場合もあり)・冷麺(小麦粉+イモ類のでんぷん+そば粉)
米粉から作った麺:ビーフン

暑い時期・食が進まない時に、麺料理があるとツルッと食べられるという方もいらっしゃるでしょう。
どれも炭水化物が多い麺ですが、ちょっとした違いがあります。
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小麦粉・そば粉は米に比べてたんぱく質が多いため、麺になってもたんぱく質が多いです。
しかし、アミノ酸スコアに違いがあります。(強力粉38・精白米65・そば粉92)
(アミノ酸スコア:体内で効率よく利用されるかどうかを示すもの。100が最も高い。)
そば・米は小麦粉よりアミノ酸スコアが高いため、筋肉づくりには、小麦製品よりそば・米の方が向いていると言えます。

消化吸収は小麦が最も早く、蕎麦が最もゆっくりです。

試合前の消化を早くしたい時・すぐにエネルギー補給したい時なら、そうめん・冷や麦・うどん・ビーフン・中華麺・パスタ等の小麦粉を原料とするものかビーフンが適しているとも言えます。
(漬け汁や合わせる具材は脂・油が少ない物にする。)

練習後や試合後は、蕎麦が良い。理由は、たんぱく質が多く、さらにアミノ酸スコアも高いため、筋肉の修復にも良いためです。(おかずとして卵・肉・魚、野菜が一緒になっているとさらに良い。例:月見そば+ほうれん草のお浸し)

これからの暑い季節は、体重が落ちてしまうアスリートが多いので、まずは食事量を確保する事が疲労回復するためにも大切です。その便利な食材として“そうめん”を活用してみませんか?
“そうめんだけで、食事は終わり~”なんて事が無いようにしましょうね。冷やし中華のように、麺の上に具材が乗った料理の方が良いですよ。

サポートしているアスリート達が、
今年の暑い・熱い夏を元気に乗り切ってくれますように!

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ  アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm