大切な試合は、これまでのトレーニングの成果を発表する場である
合宿や大会等が詰まっている、暑い&熱い夏休みに入りましたね。
学生アスリートを応援すべく、色々な学校やスポーツ団体へスポーツ栄養についてお話しする機会が、この時期は特に増えます。
学生アスリートからは“何を食べたら、疲れが吹っ飛ぶか?”“怪我予防に何を食べたら良いか?”等、特効薬のような効果を期待したいという質問を頂く事が、とても多いです。
私の気持ちは“そんな特効薬のような食材があるのなら、私も知りたい…”です。
一方で、“そんな疲れがとれないのか?”“怪我が多くて困っているのか?”と心配にもなります。
よく目にする気になる学生アスリートの生活習慣と、トップアスリートを比較して、改善案について考えてみましょう。
・朝食量に改善の余地がある学生アスリートが多い。
以前、疲労回復について、食事・睡眠の質・積極的休養という観点でお話ししていますが、食事面では、特に朝食の質が低い学生アスリートをよく目にします。
(参考:疲労回復方法あれこれ
https://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/1602/”)
眠い・少しでも寝ていたい・食欲が湧かない・時間がない…等、朝食を食べられない理由は様々ですが、身体づくり・疲労回復・怪我予防等の観点を考慮しても朝食を食べない事はデメリットばかりです。
朝食は英語でブレックファースト“breakfast”と言いますが、言葉を分解すると“break:壊す” “fast:絶食する・断食する”です。朝食は夕食からの絶食状態を打ち破り、身体のスイッチをオンにする大切な食事です。アスリートのスタートラインの食事である“ご飯+おかず+野菜+乳製品”をそろえた朝食を食べておきたいところです。
以前にトップアスリートの朝の過ごし方について触れた事がありますが、熱めのシャワーを浴びる・軽い運動を実施する・10分早起きをする等を実施するのも1つです。
(参考:朝ごはんを食べよう!https://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/3334/)
試合の日だからと、朝食をモリモリ食べようと思っても、胃腸は働いてくれませんよ。
・トレーニング量が多いなら、食事量も増やさないと体重が落ちてしまう。
どの位の頻度で、体重をチェックしていますか?トップアスリートは、起床後の排尿後の朝食前・トレーニング前・トレーニング後・就寝前と、一日に何回も体重をチェックしています。
一方で、学生アスリートは、チェックしていても1日に1回…、ひどいと自分の体重を知らないというケースも目にします。
夏の暑い時期は、発汗量が多い・食欲が落ちがち等の理由から体重が落ちてしまいやすい時期とも言えます。
しかし、短期間で急激に体重が落ちるという事は、熱中症や筋肉量が落ちてしまいパフォーマンスが落ちてしまいます。(一方で、急激な体重増加(特に脂肪で)は、怪我のリスクを上げてしまいます。)
体重が大きく減少してしまう前に、朝食・昼食・夕食のみならず、補食を増やして、体重減少を防ぐ必要があるかもしれません。
夏になって、体脂肪が増加してしまうという場合は、清涼飲料水(スポーツドリンク含む)やアイス等の菓子類が増えていないかを確認する必要があるかもしれません。
体重が教えてくれる事は、とても多いのです。
(参考:夏に体重を落とさない!https://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/2956/)
・試合から逆算して、食事時間や量を決める。
13時に試合が始まる時、どのように午前中を過ごしますか?
食事面では、朝昼兼用なんて事はないですか?
特に、持久力が大切な種目であれば、エネルギー切れを起こさないように試合前はエネルギー補給する必要がありますが、朝昼兼用では、普段よりもエネルギー補給が出来ず、試合の後半を走り切る事ができません。
普段通りに起きて、朝食を食べ、試合の3~4時間前に、定食型もしくは、朝食からの時間によっては軽食でエネルギーを補給し、試合時間に近づくにつれて、吸収がスムーズな炭水化物にするなどの工夫が大切です。
・オリンピアンがオリンピック1年前にやっている事。
試合は、これまでのトレーニングの成果を試す機会です。
“試合の時だけ”という事は、基本的にないと私は感じています。“あれもやった。これもやった。だから大丈夫!”と選手が思える事が大切であり、その1つが食事です。
リオオリンピックの前に、あるトレーニング施設に勤務の方がこんな事を教えてくれました。
“選手の練習時間がリオオリンピックの競技時間に合わせて夜中なので、それに合わせてトレーニング施設の電源を入れるのが僕の役目です。電源を入れるだけですが、僕も闘っている気持ちです。”
大会が海外で開催される場合は時差があるため、大会開催国や開催国と同様で時差ない・もしくは少ない国に移動して合宿をしています。
さらに、開催1年前には、本番を想定して同じ時期に、開催国でトレーニングや試合をするケースも多くあります。
少しでも不安な要素が少なくなるように、開催国の環境を知り、対策を練る事が大切であり、大丈夫の数を増やしているのです。
一方、大丈夫の数が少ないと、不安な要素が多すぎて、集中力を高める事や、いつものパフォーマンスを発揮する事ができません。
学生アスリートの皆さ~ん!“大丈夫!”の数を増やしてみませんか?
◆執筆者:河谷彰子氏
管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師
日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。