改めて感じた食育について
8月に沖縄へ行き、“食育シンポジウム”にて『トップアスリートに学ぶ、子どもから大人の生活習慣~お父さんのお腹も凹む食習慣~』というテーマでお話をして参りました。
私が感じている大切だと感じる食育をお伝えしてきたのですが、滞在中、私が食育してもらったなと感じ、とても有意義な時間を過ごす事が出来ました。
色々な歴史的な背景の影響を受けている沖縄ならではの食文化に触れる事ができ、とても勉強になりました。
今回は、教えてもらった事や私が感じた事をコラムにして参ります。
・琉球料理と沖縄料理は違う。琉球料理にも、宮廷料理と庶民料理がある。
沖縄の郷土料理というと、何を思い浮かべますか?
ゴーヤーチャンプルー・ソーキソバ・ジーマーミ豆腐・ミミガー・ちんすこう…
かつて、沖縄は長寿の県として有名でしたが、最近の調査では、随分とランクが落ちてしまっている事が問題視されています。
(参考:琉球経営コンサルティング
http://ryukyuconsulting.com/2018/03/21/okinawa-health-management/
今回、お仕事で出会った栄養教諭の方は、糖尿病をはじめとする生活習慣病の県民が多い事を嘆いていらっしゃいました。
沖縄料理について調べてみると、琉球料理と沖縄料理に分かれています。さらに琉球料理には宮廷料理と庶民料理に分かれています。
かつて長寿だったのは、琉球料理の恩恵ではないかと考えられます。
・高齢者の女子会がファストフードで早朝から行なわれている!
琉球時代、中国からの使者が船で日本にやってきた際、風に乗って帰るため、半年間(風待ちで)の滞在中のおもてなしとして作られた料理は、中国の影響も受けた宮廷料理が提供されました。 (右写真:識名園)
明治時代、台湾は日本の統治下となり、沖縄県民が台湾へ、台湾人が沖縄に渡航し、料理店を開く等の食の交流があったため、沖縄料理が台湾料理の影響も受けています。
第二次世界大戦後、アメリカの統治下となった沖縄では、アメリカからの配給や輸入品として、缶詰料理が普及するなどのアメリカの影響を受けた食文化の影響も受けています。
1963年、北中城村屋宜原にアメリカのハンバーガーショップ“A&W”がオープンし、銀座にマクドナルドがオープンする8年前の事です。
これだけ、色々な国の食文化を受けているのは、日本の中では珍しいのではないでしょうか?
私が大学生の頃、沖縄県民の食事分析のアルバイトをした事があるのですが、“らふてー”“ちゃんぷるー”“なかみ汁”等、初めて目にする琉球料理が多く、分析をするのに四苦八苦したことを覚えています。
19年前、沖縄出身の選手が多く在籍している大学ラグビー部をサポートしていた際、普段の食事にタコライス・ポークミートやランチョンミートを食べている選手が多く、初めて耳にした私は『それは何?』と質問した事があります。14年前には、タコライスってタコが入っているの?とプロサッカー選手に質問されたことがあります。
今では、タコライスもランチョンミートも沖縄県のテナントショップが増えたせいか、関東圏で知っている方は随分増えたのではないでしょうか。
私が沖縄県民の方の食生活で、今回感じた事は、朝食はパン食の方が多いという事です。
今回の食育シンポジウムで、私はパンより米を主食にする事がお勧めであるという事を、あらゆる観点から伝えたのですが、参加者の方に、『明日から、パンじゃなくて、ご飯にしようかな?』と感想をいただきました。
また教えていただいて、思わずクスっとしてしまった事は、タイトルにある“高齢女性が、早朝からファストフードで女子会をしている”という話です。
私の近所では、このような光景をまだ目にした事がありませんが、こうような光景はいずれ増えてしまうのかな~と感じてしまいました。
昔は、食文化は親から子へ受け継ぐものであり、その背景には歴史的な影響を多分に受けていましたが、最近では大人の事情で、色々な他地域・他国の食が流通するようになり、親から子へ受け継ぐ割合が昔に比べて少なくなったようにも感じています。
だからこそ、子どもにも大人にも食育が大切であり、溢れる情報を整理しなくてはいけないのだ!と痛感して帰ってまいりました。
◆執筆者:河谷彰子氏
管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師
日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。