家事をどのように分担していますか?

 

大学の授業で〝皆さんにとってのお袋の味は何ですか?〟と学生に問いかけました。
すると学生の一人が〝お袋の味というのではなく、家庭の味というべきではないか?〟と意見してくれました。
なるほど…ファミリーマートの〝お母さん食堂〟という名称に高校生が署名を集める時代。何となく使っている言葉一つ、吟味しないといけない時代よね…と感じた私。
家庭での家事負担に通じる問題です。

・お袋の語源

室町時代から使われていたようですが、語源は諸説あり。
・子供は母親のお腹の袋によって育つから。
・昔は、母親が家のお金や貴重品等を袋に入れて管理していたから。
・子供は、母親の懐で育つため〝ふところ〟が〝ふくろ〟になり〝おふくろ〟になった。

・家事にかける時間(内閣府「男女共同参画白書 令和2年版」 生活時間の国際比較より

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/html/column/clm_01.html)

有償労働:市場で労働力を提供して対価を得る労働。
無償労働:家庭内での家事や社会的活動といった家計の構成員や他人に対して行う対価を要求しない労働。

 青字は河谷の感想
 ・どの国も男性の有償労働が長い。
・有償時間OECD(経済協力開発機構)平均:♀218分・♂317分 ⇒ ♀3.63時間 ♂5.28時間
・有償時間が長い:①日本♂(452分) ②韓国♂(419分) ③カナダ♂(341分)
平均と比べて日本♂は2.25時間長い。8時間労働の日本であるが、世界基準から外れているのか?
・女性を1とした場合の男性の倍率が高い国:
①②日本・イタリア(1.7倍)  ②ニュージーランド(1.6倍)

 ・どの国も女性の無償時間が長い。
・無償労働時間のOECD平均:♀262分・♂136分。 ⇒ ♀4.37時間 ♂2.27時
・無償時間が長い:
①イタリア♀(306分) ②スペイン♀(289分) ③ニュージーランド♀(264分)
・無償時間が短い:①日本♂(41分) ②韓国♂(49分) ③イタリア♂(131分)
平均と比べて日本♂は1.5時間短い。有償労働時間を短くしたら無償時間は増えるのか?
・男性を1とした倍の女性の比率が高い国:①日本(5.5倍)②韓国(4.4倍)③イタリア(2.3倍)

・総労働時間(有償時間+無償時間)が長い:
①日本♀(496分) ②スウェーデン♀(495分) ③日本♂(493分)
日本の男女差は3分のみだが、無償と有償の割合に大きな差がある。
・パーソナルケアの時間(睡眠+食事等)が短い:
① スウェーデン♀(611分) ②日本♂(613分) ③ノルウェー♀(615分)
日本♀は女性の中では最短の626分
世界的に見て、日本人は男女とも自分にかける時間が短いと言えそう。

 男女平等とは言うものの、世界各国男女が同じように働いているという現状はなさそう。
 やはり女性の家事時間は男性より多いと言える。

・ジェンダーレス・多様性についての意識と実態調査 (クロスマーケティングの調査結果 2021/6/17)

https://www.cross-m.co.jp/report/life/20210617gender/

既婚者の家事分担の割合(年代問わず):♂1~3割 ♀7~9割
年齢が若いほど、家事を分担している。
とは言うものの分担率が高い29歳以下でも、♂家事分担率3割以下が48%・♀分担率7割以上が63%と、分担の意識に違いあり。
 料理は女性に任せたいと思っている男性が多い?朝食位ならできるけど、夕食はハードルが高いと思っている?
 仕事があって、夕食作りは時間がない?
 女性は、これ位だったら男性でも出来そうと思って任せたいと思っている?
   出勤時についでにごみを出せる?帰宅時間が遅いから入浴が最後になるから、お願いしたい?
 家事・育児・男女の垣根についての価値観は若い年代で変化がありそう。10年後には、さらに変わっているか?

・女性の社会進出 そして、様々な価値観

男女雇用均等法が1986年に施行されましたが、当時は各種差別の禁止項目は努力義務でしたが、1990年の改正により、禁止事項になりました。当時、私は高校生です。
当時、就職先の面接で、女性学生に対し「結婚したら仕事はどうしますか?」なんて今ではタブーな質問が当たり前のようにされていました。
私の大学卒業は1995年ですが、実際、大手銀行に就職した同級生は結婚して数年後「そろそろね…」と言われたことがあります。女性は家庭を守り、育児に専念する事が大切という価値観が強く強くあるからの言葉でしょう。
色々な決まりごとが施行されても、人々の価値観に変化を起こすには、10年20年という長い年月がかかる事を痛感します。
今でこそ、「結婚したらどうするの?」「そろそろね…。」と発言したら、大問題ですが、そのような価値観を持っている人はいるということです。

私は、大学の授業で、学生にこのように伝えました。
今の世の中、男女平等・ジェンダーレス・多様性と言った考え方が叫ばれていますが、社会に出ると、色々な年代の人と関わり、様々な価値観を持った方がいる。
育った環境や世代によっては、このような考え・価値観をなかなか変えられない人々もいる。そのような中、例え正しい考え方であっても、自分の価値観と相手の価 値観にずれがあった場合、どのように伝え・訴えていくのか?ここは慎重に伝えていかないと、受け入れて貰いづらく、自分が苦しくなってしまう事もあるので、アプローチを考えないといけないと私は感じています。

・食と女性。

私にとって、食は生きる術です。だから、料理をします。
仕事柄、食を通じて色々な方々とお話をします。家によって調理担当が様々であり、休日は父親が料理を作ってくれる・祖父がお弁当を作ってくれたという家庭もあります。でも、それは割合的には決して多くありません。
自分の食の思い出をたどると、次の世代に何を伝えたいか?どのように伝えたいかのヒントがあるのでは?と、よく学生に伝えます。そして、修正したい部分があれば、修正して伝えれば良いのではないか?とも付け加えます。
そうすると、大多数の学生が母親や祖母との思い出を口にします。

食について女性に依存しすぎなのでは?と感じるケースをよく目にします。
・中年男性の健康相談に、本人は来ず、奥様だけが来られた。
・ジュニアアスリート(男女)のスポーツ栄養相談に、本人は来ず、母親だけが来られた。
  ⇒食事は妻・母任せと思っている方は存在するが、
   健康管理・アスリートとしてのコンディショニング管理は自己管理ではないのか?
  ⇒妻・母が作ってくれる食事内容に問題があってもリクエストしづらいから、直接伝えて欲しい
と感じているのだろうか?

・料理を教えられないまま、1人暮らしをスタートし、不健康な食生活を送っている。
  ⇒何故、生きる術を伝えずに親御様は実家から子供を旅立たせてしまったのか?

家事をどのように分担し、家族皆が自己管理の部分が増えていけば(そのように親が仕向けて行かなくては)、子供の行動に変化が出ないのでは?と感じます。
男女それぞれが、どのように働くかも大切ですが、男性が家の事は女性がするもの(するべき・して当たりまえ?)等という価値観を脈々と引き継がなければ良いのでは?と感じます。どのようにアプローチしたら良いのでしょう?
女性は出産と共に、自分より子供の優先順位が上がる方が多いです。中には、子供が大きくなっても、自分の優先順位が上がって来ず、自分と向き合う時間が長くならず健康管理が上手に出来ない方を多く目にします。
家族のために、やってあげる事の全てが大切なのではなく、子供がある程度の歳になったら、やらせる・任せる事も大切だと感じます。
さて、どのようにアプローチしたら、お袋の味・お母さん食堂という言葉が通じなくなる世の中になるのでしょう?

 

◆執筆者:河谷彰子氏
管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ女子代表栄養アドバイザー・サクラフィフティーン女子代表栄養アドバイザー・ユースアカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師・上智大学非常勤講師
日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。
URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm

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