生活習慣を改善するつもりがない…なんて言わないで~。


 10月27日に、令和元年の『国民健康・栄養調査』の結果が発表され、〝食習慣・運動習慣を「改善するつもりはない」が4人に1人〟という文字が飛び込んできました。
 20%か…案外、少ないな…と、これまでの経験から感じていましたが、調査結果をよく見ると、40%の方が、今の行動を変えようとは考えていないようです。
 40%か…

令和元年:国民健康・栄養調査の概要:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf

・痛みがなくても、健康診断の結果が良くなければ、放っておいては…
 令和元年の結果を見ると、健康な食習慣の妨げになっている3つは〝特にない・面倒くさい・仕事(家事・育児等)が忙しくて時間がない。〟です。
 栄養指導をしていて、最も食事を改善したい!と行動を変える方々は、まさに今、痛風発作を起こして痛みがある方です。生活習慣病に該当する疾患を持っていても、痛み等のマイナスな症状がなければ、習慣を変えよう!とはなかなか思いませんよね。

 こんな男性がいらっしゃいます。
 長期間、健康診断の悪い結果を放置されていたのですが、ちょっとしたきっかけから〝今年は、改善する!〟と決め、色々と前向きに取り組み、体重が落ちてきていました。
 しかし、通勤中の電車で、心筋梗塞を起こし緊急搬送をされてしまいました。その後、無事退院し、後遺症もなく過ごしていらっしゃるのですが〝何ともないと放置していた期間が長かったからね。もっと早く生活習慣を改善していれば、こんなことにはならなかったのにって、担当医にも言われたよ。症状がなくても、健康診断の悪い結果は放置しちゃいけないと、今は心の底から思うよ。だから、周りの人にも放っておいちゃダメだ!って言っているよ。〟とお話ししてくださいました。

・1日30分を自分への投資に!
 運動習慣に関する調査結果を見ると、運動習慣のある方が少ない事に驚きます。(男性平均:33.4% 40歳台:18.5%/女性平均25.1% 30歳台:9.4%))
 1日の歩数の目標値は、20~64歳男性9,000歩・女性8,500歩、65歳以上男性7,000歩・女性6,000歩です。どの年代も目標値に届いていないようです。


 10分歩くと約1,000歩。
 いきなり目標値と言わなくても、今より少しでも多く歩くようにしておこうという気持ちは大切ではないでしょうか?
 1日最低30分を将来の自分に投資しておいたら、必ず将来に違いが出るはず! こんな気持ちで、私は実行するようにしています。

 運動というとハードルが高いですが、
 ・通勤(買い物)ついでに、今までより少し多く歩く。
 ・一駅手前で降りて、帰宅時だけでも歩くようにする。
 というように、わざわざ運動のために着替えたりするのではなく、日常生活の中にすぐ取り入れられる方法で活動量を増やそうと心がけることは、大きな一歩と言えるでしょう。

 コロナ禍の今年、社会人も学生も、今までと随分と時間の使い方・生活スタイルが変わった方も多いでしょう。テレワーク・ウェブ会議・ウェブ授業…私の周りには、感染を心配し、スポーツクラブを解約した方や外での散歩習慣も止めてしまった方がいらっしゃいます。こういう時こそ、食習慣・運動習慣を気にしながら過ごさないと不健康な人口が増えてしまうのではないかと心配しています。
 一方で、お家時間が増え、通勤時間が無くなった分、ジョギングを始めたり、自炊をするようになった方もいらっしゃいます。そして、自分に向き合う時間を作って、ダイエットを成功させている方もいらっしゃいますよ。
 生活習慣を改善しようと思わない・改善するのが面倒くさい・時間がないと言われると、悲しくなります。やりたい何かを実行するために、健康な身体があった方が良いのでは?と感じますが、皆さんはどのように感じますか?

・メディアからのキャッチーな言葉に惑わされないで… 健康に近道なし。
 調査結果には、食生活に影響を与えている情報源として、上位2つは、テレビ・家族です。
 食事アドバイスをしていても、「家族から、〇〇と言われた。」「テレビで聞いた事がある。」とよく言われます。
 家族からの情報源も、結局テレビですよね。それだけ、メディアの影響力は大ということです。

 こんな運動は、あの運動より効果的で楽! これを食べるとヘルシー!
 という情報を目にするたび、私はブツブツ呟いています。
 ・健康に近道なし!地道に日々少しずつ!!
 ・ヘルシーって、言うけど。ダイエット・血圧低下…自分に良いように理解しされていない?このトラップに引っかからないで~

 以前、テレビのお仕事で、ディレクターさんに〝キャッチ―な物を!キャッチ―な言い方を〟〝〇〇だけダイエットのような端的な名称を!〟と言われ、とっても困りました。わかりやすく・よりインパクトのある言い方が、テレビ的には伝わることは、理解できますが、実際アドバイスする私からすると、
 ・毎日、無理なく。
 ・優先順位が高い日常生活を邪魔しないように、その合間にできる事を。
 ・やらないより、少しはやった方が良いという気持ちで。
 という観点からアドバイスしたいと考えています。

・健康のための行動は、面倒ではない。
  先日、大学生がこんな事を伝えてきました。
 〝オーガニックなど、健康に良い物はお金がかかる。だから健康的な食生活の実行が難しい。〟

ちなみに、私は、オーガニックが良いとは一言も言っていません…。

 私は、このように伝えました。
 〝健康的な食事≠高価〟と私は考えます。
 今の日本は、健康を考えながら食を選ばないといけない環境と言えます。
 生きるための食事から、楽しむための食事。この過程に肥満問題が絡んでいると感じます。
 戦時中の日本は、生きるための最低限の食事の確保が難しかったが、現代では食べ物が手軽に手に入る。
 上手に選択ができないと問題が起こる。まずは、理想的な食事って何かを知ることが大切ではないか。最終的にオーガニックを選ぶというのも1つだが、その手前には、ご自分にあった折衷案はいっぱい転がっているのではないか?〟

・行動を変えてみようか…と思わせたい。だから、感情に問いかける。
 大学で非常勤をしていますが、よく学生から食事に関して個人的な相談を受けることがあります。学生本人の相談のことも多いですが、次に多いのが家族についてです。私は良くこう伝えます。
 可愛い娘・息子が、自分のことを心配している…と思ったら、改善しようと思ってくれるよ。きっと…
 一緒に散歩しよう!!って誘ってみるのは一つよね。嬉しいはずよ。
 このような子供からの指摘は、少なくとも知らない管理栄養士に言われるより効果的ですよね。

 また、スポーツをしている子供たちのセミナーに親御様はよく参加されます。 
  健康のための食事の話は聞きに来られないけれど、自分の子供が、より強いアスリートになれるなら!と、とても熱心に食事の話に耳を傾けてくださいます。
 そこで私は、子供の食事・大人の食事の折衷案を提案します。結果、子供の話を聞きに来られたお父さまは、ご自分のお腹をさすりながら『あれが良くなかったのか…』と独り言を言いながら、帰られます。

 40%の方々が、少しでも、生活習慣を改善してみようかな?と思ってくださるといいのですが…

◆執筆者:河谷彰子氏
管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ女子代表栄養アドバイザー・サクラフィフティーン女子代表栄養アドバイザー・アカデミー(男女)栄養アドバイザー
湘南ベルマーレ育成 栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師・上智大学非常勤講師
日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。
URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm

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