若い時から気にしたい骨の事(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)

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20歳代(Aさん)と80歳代(Bさん)の女性を一緒に骨密度を測定する機会がありました。1
Aさん:骨密度って何?面白そうだから測ってみよう。
Bさん:健康には随分気を遣っているから、骨の状態を知りたい。
そんな気持ちで測定されていました。
結果、Bさんの方が高い骨密度でした。Aさんの将来の骨の状態が心配です。
骨粗鬆症(骨の密度が低くなる病気)の情報は高齢者に対して発信される事が多いですが、“若い頃からの生活習慣が将来の骨密度を決める”という事を知っていただきたいと思いコラムを書いてみました。

避けられない VS 避ける事が出来る危険因子

 

皮下脂肪と女性ホルモンは密接な関係があり、2
体脂肪17%前後で初経を迎えやすくなります。
体脂肪が低すぎると、生理が止まってしまったり、中学生位の年代だと生理が来たいのに来ない(=遅い初経)という事になります。
遅い初経は避けられない因子に入ってはいますが、中には十分な食事量を確保していないために起こっているので、避ける事が出来る危険因子の可能性もあるのです。
小学生が読む雑誌にすでにダイエットについて書かれている物を目にした事がありますが、子ども達へどのように伝わっているのかが気になるところです。
Aさんに伺ってみると、生理は不定期にしか来ておらず、特に気にすることなく放置していたそうです。
私は1か月間の基礎体温をつけて、婦人科の受診を勧めました。

 

しらす干し・納豆・小松菜ってすごくない?

 

“牛乳を飲むと背が伸びる”と言われるほど、骨作りにはカルシウムを多く含む牛乳は便利な食材です。
(年代別の乳製品の目安量:https://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/133/参照)
カルシウム以外に骨作りに欠かせない栄養素はビタミンD・ビタミンKです。3
しらす干し・納豆・小松菜は骨作りを後押ししてくれる食材と言えそうですね。
乳製品を食べた上で、じゃこのふりかけ・小松菜の胡麻和え・納豆かけごはん等を組み合わせて食べておきたいですね。

 

ビタミンDは体内で作り出される!

 

ビタミンD不足は小腸からのカルシウム吸収が悪くなります。
成長期であればくる病になって、ひどいO脚・成長障害・歩行障害が起こってしまいます。
最近の研究では筋力(特に下肢)が衰え、転倒しやすくなる事が分かっています。

 

今のところビタミンDは不足しにくい栄養素とされています。4
なぜなら紫外線に当たることで人間の皮膚で作られるビタミンだからです。
一般的に晴れた日に顔と腕が15分日光に当たっていればOKとされています。
この位の時間であれば、皮膚がんの心配はほとんどありません。しかも上記のビタミンDを多く含む食品を食べるよりも、たくさんのビタミンDが作られます。
通学や通勤で外出する機会が多い方は問題ありませんが、室内に閉じこもりがちの方は、少し外をお散歩したら良いかもしれませんね。

 

スナック菓子とジュースは要注意!

 

リンは骨作りに必要な栄養素ですが、とり過ぎは骨からカルシウムが溶け出してしまいます。
牛乳にはリンが含まれていますが、カルシウムとリンのバランスが絶妙でとり過ぎの心配はありません。
注意したいのは食品添加物です。原材料名に記載があるのでチェックしてみましょう。5
塩分とリン酸のとり過ぎ = スナック菓子の食べすぎ + さらに清涼飲料水 このような間食は心配です。
Aさんにお話しを伺うと、お菓子やジュースが大好きで、まともな食事を食べていないようでした。

 

やっぱり運動は欠かせない。

 

骨作りに運動は欠かせません。6
骨への物理的な刺激が強い骨作りを後押しするためです。
長期間無重力空間にいた宇宙飛行士の骨密度が低くなる話は有名ですね。
水泳選手の骨密度は運動習慣の無い人と骨密度が同じ位だという研究結果もあります。
とはいえ、筋肉を動かす事で骨への刺激が多少なりともありますので、水泳ではいけないという事はありません。
Aさんはインドア派なのに対して、Bさんは、毎日色々な所へ電車と歩きで出掛けて行っているとの事でした。

 

AさんとBさんの2人の生活習慣の違いが骨密度に表れていたんだなと、感じてしまったひとコマでした。
骨密度は男女とも、およそ20歳をピークになだらかに下がっていきます。
まずは、いかにピークを高めておくかが大切なんですよね。

 

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ  アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm