スポーツキッズとの食の思い出(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)

河谷彰子タイトル45

小学生以上になると、家庭から離れて食に触れる機会も多くなるでしょう。1
スポーツを通じて、食の様々な情報を伝えられたらなと私は考えています。
スポーツキッズとの食の触れ合いで私が感じた事を書き綴ってみました。

手を合わせて”いただきます。”

キャンプでの食事では手を合わせて皆で“いただきます”をします。1
手を合わせる理由は、お喋りに夢中になっているところ、気持ちを切り替え食事に集中してもらうため。
そして“いただきます”の言葉の前には“作ってくださった方に感謝して”と一言添えてご挨拶します。これは家庭での“いただきます”とちょっと差別化し“いただきます”の意味を考えて欲しいから。
家庭で“いただきます”を言う習慣のないキッズは『どうして“いただきます”を言わないといけないの?』と質問してきます。
習慣のあるキッズは『食べ物の命にも感謝だよね。』と皆に教えてくれます。
家庭での食事風景が垣間見る事が出来る瞬間です。

ある日『どうして、手を合わせる時に小指が離れているの?』と私に質問してきたキッズがいました。手を合わせてみると、確かに私の両小指は離れてる!というか、くっつけようとしてもくっつかない。指摘されるまで気づかなかったのですが、小学生の頃にドッジボールで突き指をし過ぎたせいです…
キッズは大人の随分細かい部分まで観察しているんだな。。。と驚かされたと共に、ちゃんとしなくては!と姿勢を正した私でした。

 

卵ってどうやって割るの?

殻に入ったままの温泉卵が提供されました。1
卵をじーっと見つめ『卵ってどうやって割るの?』と聞いてきました。
隣の子が『こうやるんだよ。』とご飯の上に綺麗に割って見せてくれました。
卵割りにチャレンジです。
おそるおそる卵を皿の角に当ててみても、なかなかヒビが入りません。
もう一度チャレンジ!今度は力を入れ過ぎてグシャッとなり、殻が混じって飛び出してしまいました。
『あ~あ…』と周りのキッズに言われて、ちょっと恥ずかしそうにしていましたが、苦労して割った温泉卵を美味しそうに食べていました。
きっといつもの卵とは違った美味しさを噛みしめていた事でしょう。
キッズ同士での、こんなやり取りは微笑ましいなと感じた光景でした。

格好良いところをキッズに見せるために、卵の片手割りを練習しちゃおうかなと思った私でした。

 

嫌いな食べ物もチャレンジ!

昆布の佃煮が手つかずの状態のまま、遊び始めている子供がいました。1
『あれ~?昆布残ってるよ。食べないの?』と声をかけると『うん。。。』と小さく頷きました。
周りの子供に『え~。美味しいのに~。』と言われて、ちょっと気まずそうな顔をしていました。
『ご飯と一緒に食べると、美味しいんだよ~。ちょっと食べてみな~い?』
すると、ためらいがちに恐る恐るご飯と一緒に口の中へ…。あれ?意外と美味しいと感じたのでしょうか。結局、残さず食べて『美味しかった。』と笑顔で一言。

野菜が手づかずのキッズを発見!
『野菜もちゃんと食べないと、頑張れないよ~。緑の野菜だけでも食べてみようよ。緑の野菜を食べると、風邪ひかないんだよ~。』と話しかけると、何も言わず食べ始めました。
隣でその様子を見ていたキッズも食べ始め『見て!食べたよ!』『私も~』と教えてくれました。

皆で一緒に食事をすると、嫌いな物や食べた事の無い物もチャレンジしてみようと思いやすいんでしょうね。
家庭での食事で、食べないから出さないという方もいらっしゃいますが、私は食べなくても出し続ける・お腹が空いたら、何でも食べる!だから代わりの物を出さない事が大切だと伝えています。そして、食べたら良い理由を添えるとチャレンジ精神をくすぐるんじゃないかなと感じています。時間をかけて、人前では何でも食べられるキッズになって欲しいなと感じます。

 

料理を作ってチャレンジ!

食べる事が身体作りに大切だからと、たくさん食べる事を推し進めていた、中学生1
のスポーツキッズが反抗。提供されたお弁当をこっそりトイレに流して捨てていました。そしてトイレを詰まらせてしまい事件発覚!
これではいけないと、食の大切さをあの手この手で伝える事にしました。
試みの1つがキャンプでの3食全てをキッズで作る事にしました。
料理風景を観察していると、手際よくあれこれ指図するキッズ・調理器具を手早く洗うキッズ・配膳を切り盛りしているキッズと自然に分担して苦戦しながら、あ~だこ~だ言いながら、ワイワイ料理をしていました。

“この子は普段から料理をしているんだな~。”“普段はリーダー格ではないけれど、状況が変わってイキイキしているな~。”“お!包丁を持つ手が危なっかしい。大丈夫かな。”等、いつもと異なるキッズの様子を観察する事ができました。

ある日の夕飯はカレーと豚汁。
包丁をあまり持った事がないキッズが多かったので、包丁の使い方を説明すると『やってみたい!』『僕もやりたい!』と次々と声が上がり、皮むき競争がスタートしました。
『指を切らないようにね~。』と内心ハラハラしながら、キッズを応援。キッズの目は真剣そのもの!ゆっくりゆっくり慣れない手つきで頑張っていました。
『上手くできないよ~。』『こんなになっちゃった…』と不格好になってしまった野菜をしょんぼり見つめるキッズに私は『ちょっと小さくなっちゃったけど、最後までやりきる事が大切なんだよ。良くできたね。』と声をかけました。
練習後でお腹をペコペコにさせながら、頑張って作った料理は格別な美味しさです。『美味しい!』と言いながら、ちょっと作り過ぎではないかという量でしたが、見事完食!
この経験後、キッズは普段ご飯を作ってくださっている方々に感謝し、食事を残さず食べるようになりました。
ちなみに、このキャンプではコーチも一緒に火おこしからスタートし、バーベキューをしました。キッズはコーチに負けじと火おこしをし、コーチも童心に戻って奮闘していましたよ。

子供達の様々なチャレンジや奮闘の経験が生きる術を身に付け、習慣化するのではないかなと感じています。
そして、マンツーマンで伝えていくよりも、集団で学んで行った方が効率的な事が多いのではないかなと思います。そして、ちょっと年上が年下に伝えた方が良い事も多いなと感じます。年上が年上らしく、年下が年上に一目置かれるという姿は、見ていて清々しいなと感じます。まさに、前回の8~10歳の部分に書いてある“2~3歳、年の違う子と遊ばせる経験が大切。そうしないと大人になれない。”という点でもありますね。(https://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/2072/

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ  アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm