身近な食材”卵”には??がいっぱい。(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)

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朝食から、ご飯とおかずは食べておきたい!を推奨している私にとって、卵は朝1
の便利食材としてお勧めの食品です。
特別な料理をしなくても良いのが卵かけご飯!
最近、卵かけご飯に関する疑問が多く聞かれるので、お話し致します。
皆さんは、卵を買う時に何を基準に選んでいますか?色々な卵が販売されていますが、何が違うのでしょうか?という事についても考えてみましょう。

卵かけごはんはダメなの?

卵も納豆も、たんぱく質が多い食材のため、朝からたんぱく質を積極的にとってお1
きたいですし、アスリートにとっては、卵かけ納豆かけご飯はとっても手軽な朝食として紹介しています。しかし、今年の春から夏にかけてのセミナーで『卵かけご飯・卵かけ納豆ご飯は良くないと耳にした事があるのですが?』と言う質問を多く頂きました。
私がアスリートには特に推奨したい卵かけ納豆ご飯が危うい!と早速調べてみました。

納豆にはビオチンというビタミンB群の1つである栄養素が含まれています。1
ビオチンを多く含む食品には、レバー・魚(特にマガレイ・マイワシ)・落花生・卵黄・大豆製品等があります。
しかしビオチンは腸内細菌によって体内で合成されるため、バランスの良い食事をしていれば不足する事はありません。(まれに、生の卵白のとり過ぎや薬剤の服用によって欠乏症が出る事があります。不足した場合、皮膚炎や脱毛の症状が出ます。)

卵白にはアビジンという卵白にのみ存在するたんぱく質が含まれています。
生の状態ではビオチンと結合してしまい、ビオチンの吸収を阻害してしまいます。つまり、生卵を溶き卵にした状態で卵白に含まれているアビジンと卵黄に含まれているビオチンは結合してしまいます。しかしビオチンと触れない状態で卵白に火を通せば(卵白が透明から白濁すれば)、この作用はなくなります。

これらの情報から卵を生の状態で卵かけご飯にした場合や生卵と納豆をかき混ぜる料理である、卵かけ納豆ご飯が良くないという情報があるのでしょう。
「しかし、生の状態でかき混ぜる料理には、卵焼き・スクランブルエッグ・茶碗蒸し…1
ホットケーキ・クッキー等、卵料理の多くが該当する事になってしまいます。
ビオチンを含む食品には、卵黄や納豆以外にも、たくさんの食品に含まれていますので、アビジンがビオチンの吸収を阻害する事を気にしなくても良いのではないかなと感じています。

卵も納豆もたんぱく質が豊富に含まれている食材である事には変わりがありませんので、私は気にせず卵かけご飯や卵かけ納豆ご飯をこれからも食べようと思っていますし、お勧めしたいと考えています。
それでも気になる!という場合は、卵を割った後に白身だけを取り除いて、別の料理に入れて加熱して食べれば良いのではないでしょうか?
例えば、卵かけご飯は卵黄だけを入れて、卵白は味噌汁の中に入れる。と言う具合です。その方が味が濃厚になって好きだという方もいらっしゃるかもしれませんね。

鶏卵の種類と値段のカラクリ

皆さんは、何サイズの卵を購入していますか?1
実は、卵の大きさに関わらず、黄身のサイズはほぼ同じなんだそうです。
つまり、白身のサイズに違いがある=たんぱく質量に違いがあるという事です。
積極的にたんぱく質をとりたいという方は、大きなサイズの卵を購入した方が良いという事ですね。
ちなみに、生み始めたばかりの卵の大きさはSSサイズで、鶏が成長するに従い大きく重くなります。

殻の色にこだわりはありますか?
赤玉の方が、若干価格が高いですが、別に何かに優れているという訳ではあり1
ません。
含まれている栄養素は、白い卵と同じです。
赤玉品種の鶏が産んだ卵で、赤い羽毛の鶏が産んだ卵でもありません。白い卵よりも高いのは、鶏の飼料摂取量が多く生産率が劣るためと言う理由と(最近では昔にくらべて白玉品種とあまり変わらなくなってきているそうです)、赤玉の色の基準(斑点・ピンク色等の見た目の規格基準)に合わず、はじかれる量が多いためだそうです。驚きですね。

卵の中には、ビタミン類等、色々な栄養素が強化されている事が売りになっている物もありますが、違いは鶏のエサにあります。通常はトウモロコシが主体の餌ですが、卵黄を濃いオレンジにする場合は、パプリカの粉末等をエサに加えて与えていますし、なるべく白くしたい場合は、米粉をエサに与えています。白いケーキを作る場合は、この白い卵が好まれるようです。
ヨード卵はエサに海藻を含ませることで、卵にヨウ素を含む事になります。(通常の卵にはヨウ素は含んでいません。)

平飼いの卵は、鶏がゲージ飼いではなく、平たい地面で放し飼いの状態で飼われ1
ています。ストレスがなく、運動量が多いというのが売りですが、卵自体に含まれる栄養素には、残念ながら違いがありません。面積当たりの飼育数が少ない・産卵箱に卵を産まない一部の鶏の卵が踏まれる確率が高い・管理に手間がかかる…等の理由で高くなります。

卵の鮮度と美味しさは比例しない!

“生食には新鮮な卵が美味しく、ゆで卵は賞味期限に近い物の方が美味しい”と株式会社 愛鶏園 EGG FARMS(http://www.ikn.co.jp/i-tamago/top.html)代表取締 齋藤さんが教えて下さいました。もう、ビックリです!
新鮮な卵は炭酸ガスを白身に多く含み、白身が少し濁っています。卵かけご飯に1
すると美味しいのですが、加工する場合、特にゆで卵では美味しさにつながりにくいそうです。
新鮮な卵をゆで卵にした時、薄皮が剥けにくく、白身がボソボソしてしまったという経験はありませんか?これは炭酸ガスの影響で卵の白身が膨張しているためだそうです。卵の保管温度によりますが、1週間ほどするとガスが抜けてゆで卵は白身がプルンとして美味しくなります。購入してから1週間位が、ゆで卵にすると美味しくなる時期だと教えて下さいました。(目玉焼きも同じ。)
卵のパックに生食で食べられる賞味期限が記載されていますが、採卵日から3週間以内の日にちを付ける事が決められています。スーパーや販売所では大体2週間位の日にちを目安に付けている事が多いそうです。
賞味期限に頼り過ぎ?(https://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/974/)も合わせてご覧ください。

色々と調べてみると、卵売り場をウロウロしてみたくなりました。
さて、皆さんはどの卵を買いますか?そしてどのようにして食べますか?

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ  アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm