食育について感じた事~とある空港での出来事~(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)

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2月に佐賀へ行った際の出来事です。1
佐賀空港の到着ゲートを出ると、エプロン&三角巾姿のたくさんの子ども達に囲まれました。まるで有名な海外タレントのように!
手作りのパンフレットを渡していたり、イチゴを乗せた大きなお盆を持って『食べてみてくださ~い!』と言っている子や海苔をプレゼントしている子もいました。
一所懸命な姿に惹かれ、パンフレットを手にすると、何だか素敵な活動をしている事が分かりました。

食・店・見どころ紹介

手作りされたパンフレットには、佐賀県の特産品・美味しいお店の紹介・見どころ1
が説明されていました。1つのテーマを3名程で担当しているようで、実際に出向いて調査し、その模様が写真入り+手書きされています。
例えば、光樹(トマト)・さがほのか(イチゴ)では、苗から実が生る迄に工夫している事・美味しさの秘密・美味しい食べ方が紹介されています。
どちらも自然受粉させていて“さがほのか”ではミツバチ・“光樹”ではマルハナバチを使用しているそうです。
イチゴもトマトもヘタに近い部分よりも遠い方が甘くなるのですが、トマトの収穫後は甘味を全体に行き渡らせるために、ヘタを下に向けて保存すると良いとパンフレットにはレポートされていました。
この日をきっかけに、佐賀産の野菜や果物が特に気になりますし、特にフルーツコーナーでは“さがほのか”が気になってしょうがない私です。

地元スーパーやパン屋さんを紹介したパンフレットには販売されている惣菜やパンの特徴やお店のこだわりを紹介しています。また、お勧めのイルミネーションエリアを紹介されているパンフレットを読んでいる内に行ってみたくなりました。

灯台下暗し

“モデルが食べている食品”“ダイエットに効果がある食品”“海外で昔から食べられているスーパーフード”
とメディアに取り上げられ、風のように登場し、そして消えていく食品があります。
以前、テレビ出演をした際、何かにつけ『キャッチ―な事を!』とディレクターに求められ、私は“食にキャッチ―な事が、あるのだろうか?”と随分と悩みました。
それからというもの、風のように登場させる黒幕がいるのではないかという事が頭から離れなくなりました。

毎年行なわれているB級グルメに、何となく賛同できない点があります。
以前、ある地方を訪れた際『ここが、あのB級グルメの食品を作っている工場です!』と車窓から紹介された事がありました。そのB級グルメを知らなかった私は『昔から食べられていたのですか?』と質問すると『いや、そんな事はないよ。どのように誕生したのかは知らないけれど・・・』と続き、味の特徴を説明してくださいました。
B級グルメをキーワードに人々が集まり、お金が動くのは良い事だと思いますし、その地域を知って頂く良いきっかけになると思います。
国内でも国外でも、その地域の歴史・文化・習慣を感じる事が、日常とは違う時間を過ごす事が出来たと感じ、私の場合リフレッシュになります。B級グルメをきっかけに、その土地を訪れ、さらにその地域の歴史・文化・習慣を感じる事ができれば、また訪れたい!今度はあれを食べてみたい!と思えるような気がしてなりません。

都会育ちの私ですが、地方に比べて、都会は(良くも悪くも)目新しい物が溢れているように感じます。都会にいると新しい物があり過ぎて、もはや刺激と感じていないような気もします。地方にいると、食習慣が劇的に変化する事は少なく、都会に比べてブームは少ないようにも感じます。だからこそ、他地域からすると良い習慣は、日常の事となり他地域の人々に発信する事が少ないのかなと感じます。これこそ“灯台下暗し”だと感じるのです。

日本人はブランドに弱いと感じます。
ご当地グルメでブランド感・郷土料理でもブランド感・お取り寄せでブランド感…
国外の食品・食文化に飛びつく前に、日本の食文化・習慣・特産品を見直し、上手にブランド感を出せれば、食糧自給率が上がるのではないかと感じますが、いかがでしょうか?

食育として

食育基本法の成立にも関わられた服部幸應先生は食育には3つの柱があるとお話しされています。

食育の3つの柱
1.選食力を養う。
    旬の美味しさ・安心・安全な食べ物・食事バランスを知って、健康を維持する。
2.食事作法を身につける。
    日本の食文化を見直し、箸の持ち方等の正しい作法を子ども達に伝える。
3.地球の食を考える。
    環境問題や日本の食糧自給率・残飯の多さ等、食に関わる問題を地球サイズで考えよう。


植物を育て収穫を経験させる食育・料理で食育・生き物の命を頂いている事を感じさせる食育・栄養素について学ぶ食育・マナー等、食卓で伝える食育等、食育には色々な方法がありますが、中でも3つ目の柱の伝え方は、なかなか難しいと感じています。
今回の小学生の活動が、どのような授業の一環で実施されたのかは不明ですが、自分の生活圏に何があるかを知り、生産者の思いを感じ取り、自分達の感想を加えて他地域の人々へ発信する方法は地域のアピールになり、新しい食育の形だなと感じ、地域活性にもつながるのではないか感じました。現に私の購買欲は刺激されました。

佐賀といえば、はなわの歌“Saga 佐賀県”というイメージが強かった私でしたが、今回の小学生の活動をきっかけに佐賀の色々な事が気になり始めました。
皆さんは、ご自分が住んでいるエリアの魅力・名産・見どころを幾つ挙げる事ができますか?住んでいると日常になっている事柄も、他地域からすると案外目新しい事も多いように感じますがいかがでしょうか。

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ  アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm