今が旬!筍(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)
ある春の朝、竹林を通ると可愛い筍が顔を覗かせていてホッコリした気持ちにな
りました。次の日、またホッコリした気持ちになりたくて同じ道を通ると・・・可愛かった筍が少年サイズに!その次の日は青年に…2日前の姿からは想像できない程の大きさになっていました。
筍は生長が早いことで、有名ですがどこまでが筍でどこからが竹なのか?とふと疑問に思い、調べてみると、筍の皮が全部落ちて竹になるそうです。私たちが普段食べている筍(孟宗竹)だと、その期間は土から出て、わずか30日だそうです。4~5月に土から出て、6月には竹となり伸びなくなり、11月には地下茎の成長も止め、葉で光合成した栄養素は地下茎に貯め込み、よく年の春に地下茎の節から、新しい筍が出てくるのだそうです。
アクの正体
皆さんは筍のアク抜きはどのようにされていますか?私が知っている方法は、以下の通りです。
①生の筍が手に入ったら、なるべく早くアク抜きをする。(堀った後、えぐみが増えるため。)
②皮のついたまま穂先を斜めに切り落とす。また、切った部分に縦に切れ目を入れる。
(熱が入りやすい事と、茹でた後に皮をむきやすいため。)
③大きな鍋に筍を入れ、米糠と鷹の爪を入れ、かぶる位の水を入れ、落とし蓋をして水から火にかける。
(筍2~3本に対して、米ぬか1カップ 鷹の爪1~2本)
④沸騰したら火を弱めて、そのまま1~2時間茹でる(大きさによる)。
(湯が蒸発し減少していたら、継ぎ足す。)
⑤根元付近を竹串で刺して、柔らかくなっていたら火を止める。茹で汁が冷めるまで放置する。
⑥冷めたら皮を抜き、水洗いをして冷水に浸す。(この状態で保存容器に入れて冷蔵庫で保存する。)
私は、筍を茹でるためだけに米糠を準備するのは…と感じているので、米のとぎ汁でアク抜きをしています。
アクの主成分はシュウ酸(ほうれん草にも多く含まれている)とホモゲンチジン酸(里芋にも多く含まれている)です。どちらも水溶性ですが、特にアルカリ性の水(米のとぎ汁や重曹)でより取り除く事ができます。
“筍を掘り始めたら、お湯を沸かしておけ!”と言われるように、筍に含まれるチロシンが酵素によってホモゲンチジン酸に変わるため、なるべく早く加熱して、酵素の働きを止める必要があります。チロシンはアミノ酸の1種で無害です。冷たい水には溶けにくいのですが、茹でる事でチロシンが溶けだして、冷めて固まりが筍の表面に残ります。納豆の発酵が進み出てきた白い粉もチロシンです。
糠に含まれるカルシウムが筍のシュウ酸とくっつき(シュウ酸カルシウムになって)、えぐみを感じられなくなるという情報や、米糠や米のとぎ汁のでん粉が湯の中に溶け、アクを吸着するという情報もありました。(そのため、米や小麦粉を茹で汁の中に入れるのも効果があるんですね。)さらに糠の風味が筍の風味を補う効果も期待できるという情報もあります。(多すぎると、糠臭くなってしまいます。)
また、重曹で茹でる方法もあります。売っているゆで筍の原材料名に“ph調整剤”とありますが、それは重曹のようなアルカリ性の液体で煮ているためです。しかし出来上がりは、糠で茹でた物に比べると色が良くないため、筍の色を大切にした料理には不向きと言えます。
赤唐辛子を入れる理由は不確かなようです。(保存の際に唐辛子の防腐作用を期待しているとも考えらる。)
皮をつけたまま茹でる理由は、皮の成分に亜硫酸塩があり、これが筍の繊維を柔らかくするのだそうです。
とある和食の料理長は、大根おろしを使用しているそうです。
①大根おろしのおろし汁だけボールに入れる。
②おろし汁を同量の水で薄め、約1%の塩を混ぜる。
③皮をむいた筍を半分又は4つに切り、2時間②に漬ける。
筍の天ぷらで比較すると、糠で下ゆでした物より、おろし汁の方が筍本来の味がするそうです。(えぐみが何故抜けるのか不明のようです。 ためしてガッテン2009年1月14日放送より)
この方法だと火を使わないため、台所に張り付かなくても良いですし何より楽ですね。
鮮度が良いものであれば、このまま生で食べられるそうですよ。また茹でる場合は、1~2分で良いそうです。
私は大根おろしのおろし汁を使用した方法が、楽そうだというのと気になったため、試してみる事にしました。
肉巻き筍 1人分のエネルギー:165kcal たんぱく質:12.7g 脂質:7.7g 炭水化物:9.3g
<材料 2人分>
薄切りの豚肉 6枚(約100g)
あく抜きした筍 1/4本(約80g)
醤油 大さじ2
砂糖 大さじ1
日本酒 大さじ2
生姜のすりおろし 大さじ1
<作り方>
1.醤油・砂糖・日本酒・生姜のすりおろしを合わせ、豚肉を10程漬ける。
2.千切りにした筍を1の肉で巻く。
3.テフロン加工のフライパンを温め、初めは巻終わりが下になるように置き蓋を
して蒸し焼きにする。焼き目が付いたら、転がし、全体に火が通ったら出来
上がり。
言ってみれば、生姜焼きの中に筍が入った料理です。
今回の筍は1本(可食部)300gでした。食物繊維が豊富で低カロリー!ちなみに、筍1本(約300g)のエネルギー量はわずか90kcalです。
ダイエット中だけど、お肉を食べたいという時に、肉のボリュームが出るので少な目のお肉でも満足感があります。
筍にはあらかじめ下味をつけていませんが、豚肉に味がしみ込んでいる為、美味しく頂けました。むしろ、筍の香りが残っていて春を感じる事が出来ました。
残った筍は生姜焼きの漬けダレを和えて、酒蒸ししたエノキと合わせて、炒め煮にしました。こちらも春を感じる美味しい1品になりました。
200ccのおろし汁に使用した大根は約13cm。おろすのになかなか大変でしたが、コンロに張り付いているよりは良いかなと感じました。また火を通さない分、筍のシャキシャキした食感や香りが残っているので、私は生の筍を料理する時は、大根を使用したアク抜き方法を採用したいと思いました。
◆執筆者:河谷彰子氏
管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師
日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。