アスリートの食事は、運動をしない人と同じ(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)
オリンピックやワールドカップ等、大きな大会が終わると、メダリストの食事が
メディアに取り上げられる事がしばしばありますが、アスリートの食事というと、皆さんは何を想像しますか?
プロテイン・肉・ささみを食べているんでしょ。サプリメントは必須なんでしょ。
スポーツをされている方々にとっては、少しでも見習いたい情報ではないでしょうか。
アスリートとそうでない人のエネルギー比率は、それほど変わらない。
スポーツ栄養の本を開くと、体重当たりに必要なたんぱく質量は、一般人1g/kg・
アスリート2g/kgと記載があります。単純におかずが2倍ねと思った方は、ちょっと待ってください。ハードなトレーニングをするという事は、筋肉を酷使しているため、アスリートにとってたんぱく質は確かに大切な栄養素です。
エネルギーは、たんぱく質・脂質・炭水化物で構成されています。
エネルギー(kcal)=たんぱく質(g)×4(kcal/g) + 脂質(g)×9(kcal/g) + 炭水化物(g)×4(kcal/g)
一般人とアスリートのバランスの良いエネルギー比率は、右表
の通りです。
(一般人は、日本人の食事摂取基準(2015年版)」のエネルギー生産栄養素バランス参照。アスリートは減量期・試合前・グリコーゲンローディングの時期等、特殊な時期は除く。)
一般人とアスリートを比較すると、アスリートは一般人の範囲にある事がお分かりになるでしょう。
では、何故たんぱく質が2倍になるのでしょう?
それは、1日に必要なエネルギー量に違いがあるからです。20歳代の運動をしていない男性のエネルギー量は約2,500kcal /日です。スポーツ種目・アスリートの体格(主に筋肉量)・トレーニング量により、必要なエネルギー量は異なりますが、男子高校生アスリートで約3,000~3,500kcal/日・男子大学生アスリートで約3,500~4,500kcal/日です。又、私がサポートしてきた20歳代のプロ男子アスリートは4,500~6,000kcal/日と非常に幅が広いです。
1日に必要なエネルギー量が多いので、それに伴ってたんぱく質量も増えるという訳です。
簡単に言い直すと、おかずだけが2倍なのではなく、ご飯も2倍になるという事です。
さらに、ビタミン類はエネルギーの潤滑油になったり、身体の調整をするのに必要なため、消費するエネルギー量が大きくなるのに伴い必要量が増えます。つまり、野菜も多めに食べないといけないという事です。
サプリメントを取り入れる前に
アスリートがあるサプリメントをとっていると耳にすると、マネしたくなる方もいらっ
しゃるでしょう。しかし、アスリートは段階を踏んで、もしくは色々試した結果行きついた方法であると認識した方が良いと感じます。
特に、サプリメントのプロテインについて気になる事がよくあります。
食事量が多くなり食材から食べる事が難しかったり、食べるタイミングを逃したくない時にサプリメントのプロテインを使用する事はあります。しかしトップアスリートの中にもサプリメントをとらない方も多いですし、とったとしても一年中とり続けている訳ではありません。
筋肉量を増やしたい学生アスリートの中には、食事量を増やす事なく(特に朝食)、プロテインを過剰にとるケースをよく目にします。たんぱく質のとり過ぎは腎臓への負担が大きくなります。サプリメントは食事を増やした上で、検討する方が賢明と言えます。プロテインに過剰に(気持ちが)頼っていると、怪我で練習量が減った時、筋肉が落ちてしまうと過剰に心配になり、サプリメントを止める事が出来ないという学生アスリートも目にします。
アスリートの食事はトレーニングあっての事です。その時の練習量や内容によって、上手に食事をコントロールできるようになりたいものです。
いかがでしょうか。次回もアスリートの食事について触れて参ります。
◆執筆者:河谷彰子氏
管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師
日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。