朝ごはんを食べよう!(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)

河谷彰子タイトル94

大学で“食育”という授業を担当しています。毎回、色々な事をテーマに授業を展開1
するのですが、新学期の早めの時期に朝食について学生と考える事にしています。
2週間ほどすると、授業後に学生が近づいてきて『朝食を食べるように戻してから、高校生の時のような良い体調に戻った。』と教えてくれます。
肌荒れが治った・おなかの調子が良い・なんだか日中元気になった…等、改善した事を教えてくれます。

朝食を食べなくなったのは、何故か?いつからなのか?

“平成27年 国民健康・栄養調査”によると、朝食を食べていない割合は男性14.3%・女性10.1%、最も割合が高い年代は男性30歳代(25.6%)・女性20歳代(25.3%)だそうです。
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女性の場合は、子育てと共に朝食を再び食べ始める方が多いようにも感じますが、そもそもいつから食べない習慣になってしまったのでしょう?

・夕食時間が遅く、朝に空腹を感じないから。
・就寝時間が遅く、朝は少しでも寝ていたいから。
・一人暮らしになって、朝食の準備が面倒だから。
夕食時間や就寝時間が遅くなる理由には部活や塾が理由で帰宅時間が遅いという場合もあります。このような場合は、夕食の一部を塾や部活の前後に振り分けて、寝る直前に食べる量を減らすのも1つですよね。(春眠暁を覚えず…も参照にどうぞhttps://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/3319/
『料理が苦手なので、朝食を作る事が出来ない。』と学生に言われたら、私はすかさず
『卵かけご飯や納豆かけごはん・インスタント味噌汁に野菜を加えてチンしては?プチトマトをそのまま食べたって良いですよ。さらに牛乳やヨーグルトを加えるのはどうでしょうか?料理のスキルは要らないでしょ。』と伝えます。
また、『前日にコンビニやスーパーで朝食の食材や惣菜を購入しておいてはどうか?』とも伝えます。
起きて直ぐに朝食をとる事ができなくても、学校や職場に着いてから朝食でも良いのです。
それだけ朝食は食べて欲しいと感じています。

トップアスリートの朝の過ごし方。

朝食を食べる習慣がある方は、起きて直ぐに食べる事が出来ますが、そうでない1
方は、身体の準備をする必要があります。
起きたてでは、内臓も動かず食欲は湧きづらいですよね。朝食を美味しく食べる為のキーワードは“交感神経”です。寝ている時は副交感神経が優位に働いていますが、これを切り替えるには、ちょっとした工夫が必要です。
・目に明るい光を入れる。(カーテンを開けて、陽の光を目に入れる。電気をつける。)
・熱めのシャワーを浴びる。
等が簡単にできそうなことではないでしょうか。
トップアスリートの中には、30分程度のウォーキングや軽いジョギングをする方や、1
交代浴をする方もいらっしゃいます。
このような身体の準備に加え、朝食を準備して食べる時間を確保するためには、それなりの時間が必要です。食べる習慣がない方は今より10分だけでも早く起きて、何か口に入れる事から始めてみませんか?

朝食を食べた方が学力・体力が高い。

色々な学校にお仕事で訪問すると、廊下の掃除のされ方・セミナー中の学生の姿1
勢や態度で何となく朝食を食べている学生の割合が分かるような気がします。
調べてみると、朝食を食べているかの有無や、その栄養バランスによって、色々な影響があるようです。
朝食を食べた方が学力・体力が高い。(http://president.jp/articles/-/13910
朝食を食べている子供の方がメンタル面で良い影響がある。(https://www.niph.go.jp/journal/data/54-2/200554020005.pdf
アメリカでは、学校で朝食を提供するようにしたところ、成績がアップしたという調査結果もあります。

脳のエネルギー源は、ブドウ糖(炭水化物)です。脳のエネルギー補給に主食(ご飯・パン・麺類)が欠かせません。食べないと、午前中に集中できず作業効率が落ちてしまいかねません。
また、睡眠中に体温は下がりますが、体温が上がることで、身体が中から目覚めさせる事が出来ます。食べ物を消化する際に、エネルギーが消費され熱を発し体温が上がります。これを“食事誘発性熱産生”と言いますが、最も体温が上がるのがたんぱく質です。主食だけではなく、主食と主菜(肉・魚・卵・大豆製品等のたんぱく質を多く含む料理)を食べる事が効果的と言えます。

ジュニアアスリートに私は、こう伝えます。
『トレーニングをする時にウォーミングアップをしますが、朝食はその一部と言えます。朝からトレーニングをする時・午前中に試合がある場合、どんな時も朝食が必要です。きっと相手チームはまだ朝食を十分に食べていないかもしれない。消化力には時間がかかります。明日の朝食から少しずつ食べる量を増やしていきませんか。朝食をしっかり食べる事が、ウォーミングアップにも、しっかり動ける身体づくりにもつながりますよ。』
さらに続けて、こう伝えます。
『お母さんが頑張って料理する事が大切なのではありません。簡単にできる“卵かけご飯・納豆かけご飯”がお勧めです。固形物では今はなかなか食べられないという場合、バナナ+牛乳をミキサーで合わせた“バナナミルク”から始めてみては、いかがでしょうか?』

親は子供たちの朝食習慣が無くならないように、工夫する必要があるのかもしれません。
そして、親御様は朝食を食べていますか?ご自分が食べていないのに、子供に“食べなさい!”は説得力がないですよね。
朝食習慣がしばらくない方は、何とか食べる習慣を取り戻して欲しいなと感じます。

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ  アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm