ひじきの鉄分は多くない!?(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)
ひじきは鉄分が多い食材として、これまで知られていましたが、そうではない
らしいという情報です。私の周りでも、ひじき料理を見かけると積極的に食べているアスリートは多いので、それだけに衝撃的な情報です。
ひじきは鉄釜のおかげで鉄分が多かったの?
食品の成分に関するデータが載っている日本食品標準成分表(通称:食品成分表)は文部科学省が調査して公表しており、2015年12月25日に改定されました。最新の情報には2191点もの食品に関する情報が載っています。
成分に関する情報の改定は不定期で行われており、2010年に“日本食品標準成分表2010”が発表され、その後は2015年に発表の“日本食品成分表2015年版(七訂)”です。(全ての情報が更新されているわけではない。)
今回、注目したいのが“ひじき”の情報です。
前回までの食品成分表で、ひじきに関する項目は1行で終わっていますが、今回の情報では、下記のように6項目に増えています。
①ステンレス釜、乾 :ステンレス釜で煮熟後、乾燥した物。
②ステンレス釜、ゆで :①を水で戻した後、茹でた物。
③ステンレス釜、油いため:①を水で戻した後、油炒めした物。菜種油を4.3g使用。
④鉄釜、乾 :鉄釜で煮熟後、乾燥した物。
⑤鉄釜、ゆで :④を水で戻した後、茹でた物。
⑥鉄釜、油いため :④を水で戻した後、油炒めした物。菜種油を4.3g使用。
前回の情報と比較すると、鉄分に大きな違いがあります。
“鉄釜、乾”は、これまでの情報と同様に鉄分が多いですが、“ステンレス釜、乾”は、随分と少ないです。ひじきは鉄分が多い食材と信じていましたが、鉄分の多さは鉄釜のおかげだったの!?という事態です。
ひじきの煮物1食分に5gの乾燥ひじきを使用しとして、これまでは2.8mgの鉄分がとれる計算ですが、今回の情報ではステンレス釜だと0.3mg、鉄窯だと2.9mgと大きく差が出てしまいます。
ちなみに、鉄分の摂取基準(日本人の食事摂取基準(2015年版)は以下の通りです。
産地によっても異なるらしい。
(参考資料 http://www.hijiki.jp/js/fileman/Uploads/Documents/hijiki_tetsubun_20160514.pdf))
上記の資料によると…
・産地により鉄分量に大きく違いがある。(国内産:7.7mg 韓国産:47.6mg 中国産:47.7mg)
河谷の感想:海域によって、こんなにも鉄分に違いがあるのでしょうか?
・国内で流通している“ひじき”は、国内産 約13%・韓国産 41%・中国産 41%。
河谷の感想:国産が13%なら、やっぱり鉄分が多い食材として良いのでしょうか?
・国内で流通している物は蒸乾法 95%以上・煮乾法 5%未満。
河谷の感想:蒸乾の方が主流なのに、煮乾法のデータだけでは不足のような気がします。
日本のデータは四訂(1982年)からの情報を引き継いでいたのを、2015年に国内産ひじきを調べて見直されたようです。随分と古いデータを引き継いでいたんですね。
貧血予防にひじきのふりかけを愛用した私にとって、今後の消費行動に変化が出そうです。しかし、カルシウムは変わらず多い食材(5gに50mgのカルシウム)と言えるため、骨対策には貢献する食材と言えます。
文部科学省からひじきに関する新情報は、約2年たった今でも、その後の報道はありません。
結論が出ていないような情報で歯がゆいばかりですが、今後の展開に注目していきたいと思います。
◆執筆者:河谷彰子氏
管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師
日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。