食の思い出 ~フランスとそば粉のクレープ~(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)
“蕎麦”と言って、思い出す事は何ですか?
“年越しそば・信州・蕎麦ぼうろ・そばがき・ざるそば”
“蕎麦よりうどんが好き…” “そば殻の枕は、寝心地が良い!”…
私の場合、そば粉を使ったクレープである“コンプレット”とフランスの思い出があります。
社会人になって初めの1ヶ月をフランスのブルターニュ地方で過ごし、その後フランス人としばらく一緒に住んでいました。その時に連れて行ってもらったクレープ屋さんで食べたり、作り方を教えてもらったりと“コンプレット”は思い出の味です。今でも、たまに作っては思い出に浸ります。
コンプレット (1人分:エネルギー 382kcal・たんぱく質 25.8g・脂質 24.6g・炭水化物 12.3g)
塩 ひとつまみ
卵 1個
牛乳 100cc
炭酸水(または水) 100cc
有塩バター 適量
・コンプレット(1人前)
ガレット 1枚
ハム 2枚
卵 1個
ほうれん草 30g
溶けるチーズ 適量
1. ボウルにガレットの材料(バター以外)を入れて混ぜ、
約15分休ませる。
2. 熱したフライパンにバターを溶かし、1を流し入れ薄く
広げる。
3. 表面がフツフツとして周囲が乾いてきたら裏返す。
4. 裏面はさっと焼く程度でOKです。(4枚作る。)
裏面にしたら弱火にして、ハム・卵・ほうれん草・チーズ
を乗せて、蓋をして、火を通す。
フランス人の友人が作るところを見ていたら、炭酸水ではなく、ビールを入れていました。(今回は朝食をイメージしたため、炭酸水でご紹介しております。)
ガレットをまとめて作って、ラップをして冷凍保存が可能です。小腹が空いたときの補食になります。私の場合、冷凍したガレットを電子レンジで温め直し、中にハムやスライスチーズを乗せて、トルティーヤのように巻いたり、ソーセージを巻いていただく事があります。
小麦で作るクレープより、ガレットはモチッとしていて、蕎麦の香りが、また良いです。
休日の朝食にコンプレットを作る事があります。さらにコーヒーはマグカップではなく、カフェオレボウルにしてフランス気分を楽しんでいます。
フランス ブルターニュ地方
ブルターニュ地方は、フランスの北西部にある地域です。
世界遺産のモンサンミッシェル・城壁に囲まれた港町のサンマロ・生牡蠣で有名なカンカル等の名所があります。
沢山のクレープ屋さんがあるのですが、原宿にあるようなクレープ屋とは異なります。
おかずのクレープ(塩味)はガレットの上に具材が乗っていて、シードルを一緒に頂くのがフランス流です。
蕎麦というと、日本の食材だと思っていたのですが、そうではないんですよね。
ブルターニュ地方の土地は痩せているため、中国から伝わった蕎麦を育てるようになり、ガレットが作られるようになったそうです。
また、デザートは小麦粉のクレープ(甘い)を頂くのですが、日本のデザートクレープのような生クリームがこってり乗っているというより、シンプルにグラニュー糖を振っただけ・レモンソースをかけただけの物を目にしました。
と~っても美味しかったクレープは、クレープシュゼットです。
薄い銅製の片手鍋の中でオレンジ果汁・千切りしたオレンジの皮・バター・グラニュー糖のソースを作り、クレープを加えて煮詰め、仕上げにグランマニエ(コニャックにオレンジピールを加えたオレンジリキュール)でフランベします。青白い炎がクレープに注がれる光景は、とても綺麗ですし、またオレンジの香りがとって良いのです。
ブルターニュ地方は、海が近いため海水を汲んで塩田で塩を作っており、ゲ
ランドの塩は有名です。また、フランスでは無塩バターが一般的ですが、ブルターニュ地方では有塩バターが多く売られています。
日本でも有名な“クイニアマン”“塩バターキャラメル”は、有塩バターを使ったブルターニュ地方の代表的な郷土菓子です。
ぶどうの生産よりリンゴの生産が盛んで、リンゴを発酵させて作った“シー
ドル”がこの地域の名産品です。ガレットと合う辛口のシードルが私のお勧めです。
ちなみに、シードル(仏:cidre)はサイダーの語源だそうです。
皆さんにとって、思い出の土地と、その料理には何がありますか?
◆執筆者:河谷彰子氏
管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師
日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。