食にストーリーを(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)

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どこかへ出かける時、私の場合、今流行りの…というより、歴史やその土地の自然や人を感じる事が出来ると楽しかったなと感じます。

B級グルメに対する、私の心のわだかまり…

地域活性に大きく貢献しているとは思うのですが、B級グルメには、どうも心が踊りません。
B級グルメを初めて知った頃、とある地域へお仕事に伺った時のことです。

『ここが、あのB級グルメの食材を作っている工場です。』

と紹介され、何でも質問してしまう私は

「何故、この地域でその食材なんですか?」
「水に特徴があるとか、材料にこだわりがあるとか、歴史的に食べられる背景はあるんですか?」

『わかりません。知りません…』

とっても誇らしげに工場の場所を教えてくださったので、色々ご存知なのかな?と思って伺ったのに残念でした。
その料理の味を伺うと、美味しいという説明はありませんでした。1
こんな残念な説明はありません。
その料理に対する、熱い想い、人々の努力、こうして完成した料理なんだ!と暑苦しい程に説明して欲しかったと思いながら、それ以上質問できませんでした。

大分は九州エリアより愛媛の食習慣の影響を受けているのかも。 

地方へ出かけた時は、ちょっとした時間を見つけて、その土地の方々が日常的に使っているスーパーへ行きます。その地域の食習慣が垣間見えて、心が躍ります。
大分へ仕事に行った際の事です。魚売り場を覘くと、1mはある細長~い発泡スチロールのトレーに1尾丸ごと乗ったタチウオが売っており、関東では見かけない光景に、非常に驚きました。

また、その隣には“ハゲ”と書かれた魚がありました。どう見ても、“カワハギ1
”ではないか?と思い、魚売り場の方に質問すると、やはりカワハギでした。
魚の名前は地域によって、随分と異なるものがありますよね。

惣菜コーナーで、さらに驚く料理を発見しました。
愛媛県のソールフードである“じゃこ天”(魚のすり身を揚げた物で、静岡の黒はんぺんのような黒っぽい色をしている。)があり、おでんに入れたりと、日常的に食べている様子でした。

またその隣には、おでんがあったのですが、その具材がちょっとビックリ。1
大根・卵・練り物と一緒に、ぶつ切りの“なると”や“紅白の蒲鉾”が入っていたのです!
福岡県の友人に、おでんに“なると”や“紅白の蒲鉾”が入っているか聞くと入っていないとの事。
一方、大分の方々に『おでんになるとを入れるのは、皆さんにとって、普通ですか?』と質問すると、『え!入れないの?』と驚かれ、私がビックリしてしまいました。私にとって“なると”は、薄く切って、ラーメンに入れたりと、あのグルグルとギザギザをちょびちょびと味わうものだと思っていただけに、ぶつ切りにして食べる事は、『なんて大胆な!』という感想だったのです。

その他にも、だんご汁は熊本の“だご汁”と名前は似ているけど、全然違う料理など、熊本や福岡の食文化よりもじゃこ天文化が四国から運ばれているなど、地形や文化の交流って面白いな~と感じる事が出来ました。

年末年始に旅行へ行かれる方、またおせち料理を通じて、色々な食文化に触れる機会も多いのではないでしょうか?是非、食のストーリーを楽しんでみてはいかがでしょうか?

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ  アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm