カフェイン色々(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)
今年(2018年)の2月にアメリカスポーツ医学会より“エナジードリンク
摂取に関する新勧告”が発表されました。
以下がその抜粋です。
・激しい運動の前・最中・後にはエナジードリンクを飲まない。
運動前後・またはその両方でエナジードリンクを飲んだ人の死亡例が
複数ある。
・妊婦や授乳婦・心血管に問題のある人もエナジードリンクを摂取すべき
でない。
・エナジードリンクをアルコールと混ぜるべきではない。
・子どもを危険から守る
青少年は体が小さいほか、…特にエナジードリンクの副作用のリスクが高い。
エナジードリンクは子ども向けでないというメッセージが強く・広く普及される必要がある。
(論文要旨:https://journals.lww.com/acsm-csmr/Fulltext/2018/02000/Energy_Drinks___A_Contemporary_Issues_Paper.9.aspx)
(LINK de DIET:http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=63388&-lay=lay&-Find)
この発表の影響からか、イギリスの大手スーパーでは16歳以下へのエナジードリンク販売を3月から禁止したそうです。カナダでは3月にアルコール入りエナジードリンクを飲んだ未成年者が死亡する事故が起こり、エナジードリンクの販売や製造の規制が検討されているそうです。
カフェインについての国立健康栄養研究所の見解(要約)
(https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail3641.html)
・俗に“リラックス効果がある”“アレルギーに良い”“動脈硬化を予防する”“がんを予防する”等と言われ
ているが、有効性に関する信頼できる十分な情報は見当たらない。
・サプリメント等の濃縮物として摂取した場合の安全性について信頼できる十分な情報が見当たらな
いため、妊婦・授乳婦・小児は摂取を控える。
コーヒーについての国立健康栄養研究所の見解(要約)
(https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail1703.html)
・ヒトでの有効性については、直腸結腸がんに対して有効性が示唆されている。
・乳がんや消化管がんに対して効果がない事が示唆されている。
・コーヒー等、カフェインを含む飲料は精神覚醒に対しておそらく有効である。
・低血圧や胆のう疾患・糖尿病・パーキンソン病に対して有効性が示唆されている。
カフェイン・コーヒーについての厚生労働省の見解(要約)
(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html)
・カフェインを過剰にとると、中枢神経系の刺激によるめまい・心拍数増加・興奮・不安・震え・不眠症・下痢・吐き気等の健康被害をもたらす事がある。
・妊婦に対し、コーヒーを1日3~4杯までにする事を呼び掛けている。
(2001年世界保健機関 WHO)
・妊婦がカフェインをとり過ぎると、出生時が低体重になり、将来の健康リスクが高くなる可能性があるとして、妊婦は1日当たりのカフェイン摂取量をWHOより厳しい200mg(コーヒーをマグカップで2杯程度)に制限するよう求めている。
(2008年英国食品基準庁)
・1日あたりのカフェイン摂取量として、健康な成人で400mg(コーヒー マグカップで約3杯)まで、妊婦・授乳中、あるいは妊娠を予定している女性は300mg(コーヒーをマグカップで約2杯)までとしている。
(2010年カナダ保健省)
・1日当たりの摂取許容量は、個人差が大きい事等から、日本においても、国際的にも設定されていない。
400mgのカフェインとは、どの位なのか?
お茶類・コーヒー・紅茶に含まれているカフェイン量は表のとおりです。
カフェインが多い飲み物の代表として
コーヒーが挙げられますが、玉露のカフェイン量の多さに驚きますね。
上記の通り、日本においても、国際的にも設定されていませんが、カナダ保健省の提示している健康な成人で400mgを目安にすると、コーヒーのみで換算すると666mlまでとなります。つまりマグカップ1杯200mlとして3杯分という事になるわけです。
ちなみに、コーヒーショップのチェーン店のスターバックスには、4つの
サイズがありますが、それぞれの液量の目安は、ショート(240ml)・トール(350ml)・グランデ(470ml)・ベンティー(590ml)です。
1日に何杯もコーヒーを飲むという方は、適量におさまっていますか?飲み過ぎているかも?!という方は、抑えてみてはいかがでしょうか?
エナジードリンクについて、私はこう思う。
カフェインが多い飲料として気になるのは“エナジードリンク”です。
商品によって、カフェイン含有量は異なりますが、海外から入ってきた商品の中には、随分とカフェイン量が多い物や、1本あたりの内容量が多い物があります。1日に何本も飲むという方は、気にした方が良いと感じます。大容量だと、そこに含まれている糖分量も気になります。人口甘味料が含まれていて砂糖ゼロになっている商品もありますが、人口甘味料の影響も気になるところです。
(https://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/217/)
最近では、アスリート向け商品の中にカフェインが入ってゼリー等もあります。理由は“カフェインによって集中力が高まり、運動による疲労感を感じづらくするから”です。
疲労感を感じづらくしているだけで、疲労回復をしているわけではありません。一般人が疲れたからと言って、エナジードリンクを飲むのは、どうかな?と感じます。
アスリート向けに開発された商品を試合直前に“トレーニングもしっかりやった。コンディションも良い!”という状態でとるのは良いかなとも思います。
余談ですが、カフェインは飲んでから約20分で効いてくるそうです。
昼寝は30分を目安にしたいところです。寝すぎると深い睡眠に入ってしまい、すっきり目が覚められなかったり、夜の睡眠に差し支えたり、体内リズムが乱れてしまい良くないからです。
つまり、昼寝をする前にコーヒーを飲んでおくと、目覚めるべき時にスッキリと起きる事が出来るというわけです。
先日、友人が夜の就寝前に、エナジードリンクを飲むと朝スッキリ目が覚めると聞いた事があると言っていたのですが、それは違いますよね。
夜寝る前にカフェインをとる・糖分入りの飲料をグビグビと飲む…どちらも身体に良い事がありません。
アクロバティックなスポーツのスポンサーとしてエナジードリンクメーカーがつくなどの宣伝方法によって、エナジードリンクのイメージがついているように感じます。所謂“大人の事情”です。
色々な商品全てに言える事ですが、“これを飲食したら元気になる!”という物は、残念ながら無いと私は考えます。特定の成分が高濃度に含まれていると、良くない事もあるという事や、これまで存在していない商品は身体にどのような影響があるかが不確かである事が多いので、特定の商品を飲食し続けるのはどうかな?と感じます。
皆さんは、どのように感じますか?
◆執筆者:河谷彰子氏
管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師
日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。