赤飯色々(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)

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皆さんは、お赤飯をどの位の頻度で召し上がりますか?1
コンビニにお赤飯のおにぎりが売っている為、赤飯がハレの日(お祭りや年中行事などを行なう特別な日・非日常という意味)の食べ物と思っていない方もいらっしゃるかもしれませんね。
おはぎ・ぼた餅と同様、古くから赤は邪気を祓う色とされているため、お赤飯もハレの日の料理です。

赤飯は、元々赤米を蒸した物だった。

赤米は縄文時代に中国大陸から日本に伝わってきたインディカ種の米で、1
炊飯すると赤飯のような色になります。この米は野生に近い米で、今私たちが食べている米より味が悪く、収穫量も安定しませんでした。当時、お米は高級な食べ物であったため、神様に蒸した赤米をお供えする風習があったようです。
赤米は江戸時代前まで食べていたようで、品種改良により味が良く、収穫量が安定している現在のジャポニカ種の米に変わってきたようです。
普段に食べる米は変わっても、ハレの日のご飯は赤い色のご飯をお供えする風習は残り、江戸時代中期に、白い米に小豆で色づけた赤飯をお供えするようになったのです。江戸時代後期には、庶民のハレの日にも赤飯は登場するようになりました。
蒸したジャポニカ米は、冷めるとすぐに硬くなってしまうため、もち米を使用するようになり、“ささげ”で色を付けるようになったようです。
炊飯器で作る“炊き赤飯”では、うるち米を混ぜると良いです。

ささげ VS 小豆

赤飯に入っている豆は、ささげ派ですか?小豆派ですか?
我が家では“ささげ”を使用しますが、地域性があるようです。
関東地方は“ささげ”を使用する事が多いようです。“小豆”は皮が薄いため、豆の皮が割れてしまい、切腹を連想してしまうと倦厭され、皮が厚くて割れにくい“ささげ”を使用するようになったようです。赤飯にした際の味に大きな違いはありませんが、小豆の方が柔らかめです。
ささげも小豆もマメ科のササゲ族なため、言ってみれば親戚です。
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含まれている栄養素を比較すると、“ささげ”のたんぱく質が多く、炭水化物が少ないです。炭水化物が少ない分、餡子のような粘りが出ないと想像できます。
小豆に比べて、ささげの亜鉛・β-カロテン・葉酸量が多い事が分かります。
亜鉛:不足すると、味覚障害・皮膚障害・免疫力の低下が起こる。
          β-カロテン:皮膚・粘膜を健康に保つ。
葉酸:ビタミンB群の一つ。造血のビタミンとも呼ばれている。
          新しい赤血球を正常に作り出すのに必要。
          親戚関係である豆ですが、色々と違いがありますね。

赤飯の作り方(私の大学時代の調理ノートより)

大学時代の必修授業に調理実習がありました。1
4年間、週1回の半日授業で、和洋中の本格的な料理を教えて頂きました。
その時の授業のノートは今でも宝物なのですが、随分と真面目に授業を受けていた様子が伺えます。
折角なので、その時のレシピやメモをお伝えしたいと思います。

材料
  もち米 200g
  ささげ 20g 米の10%
  水
  ごま塩 少々

作り方
  1.ささげをさっと洗い、ささげの4~5倍の水で、2~3回茹でる。
    (赤くなったゆで汁は、全て取っておく)
  2.冷めたゆで汁に、洗米したもち米を一晩浸水させる。(ゆで汁は、また取っておく。)
  3.蒸し器に麻布を敷き、2の米・ささげを入れ、その上に麻布を被せ、包む。
  4.強い蒸気で30分蒸す。蒸し器の湯を切らさないように注意。
  5.米を浸してみて、まだ中に白い部分が残っていたら、麻布ごと米を蒸し器から外し、赤いゆで汁を
    十分にかける(うち水をする)。
  6.さらに30分蒸す。(芯がなくなるまで、5を続ける。)

・ささげは、前もって水に漬ける必要はない。
・小豆を使用する場合は、豆を固めに茹でると割れなく良い。
・うち水をした赤飯は、次の日でも硬くならず、美味しい。
・ごま塩は炒った胡麻+焼き塩を混ぜて使用。
   お祭りなどの時は粗ずりの物を使うと、風味も良く消化吸収も良いが、大事な時の食事では粒の
   ままにする事が大切。

コンビニでお赤飯のおにぎりが売られているせいか、随分と身近な料理になっているように感じますが、改めてレシピを見ると、随分と手間がかかり“ハレの日の料理”だと感じます。
ゴールデンウィークに、子供達と本格的お赤飯を作ってみるというのはいかがでしょうか?

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ  アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm