春の訪れを感じるフキノトウ(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)

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写真はかぐらスキー場に、4月頃からお目見えする鯉のぼりです。1
今年は例年よりも随分と雪解けが早く、スキーの練習をしたい私にとっては、焦るばかりです。
雪が溶けた部分から山菜が顔を覗かせるため、ここは食べ頃だな~とか、ここはすっかり成長してしまったな~と、今年はリフトの上から、随分と沢山の山菜を見物しました。そして、ふと気づいてしまったのです。

フキノトウとフキは同じ!

写真は、奥只見丸山スキー場のフキノトウです。1
いつもの年なら、食べ頃のフキノトウや、ギリギリ食べられな~という程度のフキノトウがリフトの上から観察できるのですが、今年は10㎝程に成長し、花が咲いている物まで目にしました。
花が咲いた後はどうなるのだろう?と考えていたら…“フキノトウが成長したらフキでしょ。”とリフトで隣に座っ1
ていた先輩に言われ、ハッとしました。
フキノトウもフキも食べた事がありますが、同じ植物だという事に、恥ずかしながらこの歳になるまで気づきませんでした。
春を感じるフキノトウの天ぷらに対し、学生時代に採れたてのフキをお世話になっている方から沢山いただき、茹でる前に皮をむいたため、アクで手を真っ黒になった思い出の食材が同じ植物だったとは!と驚きました。
そこで、フキノトウとフキについて調べてみました。

縄文時代にも食べられ、平安時代には栽培までされていたフキ

日本原産のキク科フキ属の植物で、多年草です。
フキノトウ(蕗の薹)の“薹”とは、花茎と呼ばれる花をつける軸の部分を指し、春に顔を覗かせる部分の下には、地下茎が地中に伸びています。フキノトウが枯れた後、その地下茎から出てきた葉柄部分が“フキ”です。
どうやら縄文時代にも食べていたようです。
平安時代には栽培も行なわれていたようで、フキは食用に、フキノトウは薬用として利用されていたようです。
現在栽培されて市場の60%を占めているフキは、江戸時代末期に愛知県で栽培されていた品種である愛知早生(あいちわせ)種で、フキ全体が黄緑色をしていて(根本が少し赤みがかっている物もある)、味はみずみずしくて柔らかいのが特徴で、アクや苦味は少なめです。雄株しかないため、種子で繁殖できないそうです。フキの長さは1m前後です。
山に自生しているフキはヤマブキ(又はノブキ等)と呼ばれ、フキの根本が赤く、味は柔らかく香りが強いのが特徴です。フキの長さは30~40cmと短めです。きっと、私がスキー場で観察していたフキは、この種類でしょう。
ケーキのデコレーションで使用される砂糖漬けにされているフキは、秋田フキを使用されているようで、上記のフキよりも大きく、長さも1.3~2mと大きくなり、直径は5~6cmにもなり、柄が硬いため野菜としてはあまり食べられないようです。

国立健康栄養研究所の情報によると…

https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail3671.htmlより抜粋)
・通常の食事から適切に摂取する場合はおそらく安全であるが、ピロリジジンアルカロイドを含み
    肝毒性のおそれがあるため、健康効果や病気の治療効果を目的とした過剰量の摂取やサプリメン
    トなどの濃縮物を摂取する場合はおそらく危険である。また、お茶として摂取する場合の安全性
    に関する十分な情報は見当たらない。
・ピロリジジンアルカロイドは水溶性であるため、低減するには調理の際に十分なあく抜きを行う。

あく抜き方法について

フキノトウやフキのあく抜きには、茹でたり、水に浸しておく方法があります。収穫後、時間と共にあくが強くなるため、なるべく下処理を早くした方が美味しくいただけます。
フキノトウを天ぷらにする場合はあく抜きをする必要はなく、そのまま小麦粉をまぶしてあげれば良いです。お浸しや和え物にする場合は、塩を加えた湯で下茹でをし、3~4分茹でたら、冷水に放ち、しばらくさらしておくと良いです。1
フキはまな板の上に並べて塩をかけ板づりをした後、熱湯で茹で、冷水に放します。その後、皮をむきます。

山の食材で今が旬のフキノトウと、海の食材で今が旬のカツオ!
どちらも春の訪れを感じる食材であり、私にとってはスキーシーズンが終わってしまうな~と感じる食材です。

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ  アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm