フランス食情報 牛乳が常温で売っている!

河谷彰子タイトル125

<フランス食情報 牛乳が常温で売っている!>

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10月下旬にフランス・ブルターニュ地方に在住の友人に会いに行って参りました。旅行へ行くと食事が楽しみの1つであるほか、食材を扱っているお店に立ち寄りたくなります。そして、見た事のない食材を見つけると、どのように食べるのか?と気になります。
スーパーやマルシェ(市場)へ行きワクワクし、友人宅での食卓で、私の日常と異なる食文化や食習慣を体感して参りました。そこで感じた事と、その後調べた事をコラムにしました。

海外の牛乳売り場には、たくさんの種類が並んでいるという印象がありますが、今回特に驚いたことは “牛乳が常温で売られている!”“冷蔵庫内にも牛乳はあるが、常温で売られている商品の方が多い!!という事です。常温の牛乳のとなりには、ミネラルウォーターが売っているのです。とても違和感を覚えました。”常温の商品の容器は、柔らかいプラスチック製のもので、賞味期限は“04/12/18”と記載されていました。牛乳は紙パックでしょ?というイメージがある私にとっては、プラスチック容器に入った常温の牛乳は衝撃的でした。

・何故、常温で売っているの?

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(右上写真:乳糖を除去した低脂肪牛乳 右下写真:ABマーク(アグリキュルチュール・ビオロジック)がついた有機肥料使用の低脂肪牛乳)蓋の色は乳脂肪の含有量によって異なり、以下の3種類があります。

(全脂乳 乳脂肪分3.5%以上)

(半脱脂乳 乳脂肪分1.5~1.8%)

(脱脂乳 乳脂肪0.3%以下)

フランスで飲まれている牛乳の約8割が半脱脂乳だそうです。
ちなみに、日本の低脂肪乳は乳脂肪0.5~1.5%、無脂肪乳は0.5%未満です。
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つまり、フランスの青キャップの牛乳は日本の低脂肪乳より脂肪分は多く、緑キャップの牛乳は日本の無脂肪牛乳より、さらに乳脂肪が低い可能性が高いということですね。

日本にも常温保存可能なLL牛乳(ロングライフミルク)がありますが、紙パックです(内側にアルミ箔が貼ってある。)。ロングライフミルクはあっても、日本ではメジャーではありません。なぜでしょう?
牛乳は冷蔵保存でしょ?常温で売っていると、何だか危なそう…というイメージがあるからでしょうか?
ちなみに、ロングライフミルクもフランスで常温販売されている牛乳も、開封したら普通の牛乳と同様、要冷蔵です。


・加工方法の違い

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生乳から商品に加工する際に殺菌をしていますが、加熱温度や時間に違いがあります。(右表参照)
日本で流通している殺菌方法の約9割は、超高温瞬間殺菌法(UHT)です。
また、日本のLL牛乳は超高温滅菌法で滅菌しています。
常温で販売されていたフランスの牛乳は “UHT”と記載されており、フランス人の友人はこれが常温で販売できるポイントだと話していました。
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日本の超高温瞬間殺菌法も“UHT” と言いますが、基準は少々異なるようでした。
表をご覧の通り、フランスの“UHT”は、日本の超高温瞬間殺菌法と超高温滅菌法の中間と言った感じでしょうか?
常温で販売できる一番の特徴は容器にあるようでした。プラスチック製の物だと、菌が増殖しないようにできるようです。

私はふと疑問に感じました。
“何故、日本の主流は要冷蔵の商品なのか?” “加熱方法やパックにコストがかかるからなのか?”
“食料自給率が低い日本で、牛乳を長期保存できれば、廃棄は少しでも減らせるのではないか?”


・フランスの牛乳の消費量

乳製品の消費量について調べてみると、以下の資料を見つけました。
1(一般社団法人 中央酪農会議Japan Dairy Council ホームページ内より抜粋し、編集http://www.dairy.co.jp/jp/jp06.pdf

1人当たりの飲用乳・チーズ・バターを足した消費量が多い国順に並べ、一日当たりの消費量を算出してみました。
日本人の1日当たりの乳製品の消費量は随分と少ないですね。
牛乳やヨーグルトは、たんぱく質・カルシウムを多く含み、骨づくり・筋肉づくりに牛乳は手軽な食品なので、小学生までは2杯/日・大人なら1杯/日・アスリートなら3杯/日を目安にとって欲しいところです。

少し前までは、給食には必ず牛乳がついていました。
栄養士の立場から言うと、牛乳コップ1杯からとる事が出来るカルシウムは、献立を立てるのに随分と楽です。牛乳のアレルギーがある場合は別として、牛乳を必要量はとっておいたら良いのにと感じます。自動販売機にジュース類を販売する前に、牛乳を!と考えます。販売数が確保できないのではないか?と考えるのであれば、LL牛乳を販売しては?と感じます。
皆さんは、常温で売っている牛乳について、どのように感じますか?

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm