意識高い系の食材の1つ“グラスフェッド”


 ここ数年で訪れた海外のスーパーで私はこう感じていました。
 “日本より、食に関して気にしようとしている人口の割合が多いのか?”もしくは“国として気にしましょう!と促しているのか?”
 有機(BIO)・グルテンフリー・グラスフェッド…日本でも、これらの言葉を耳にしますが、日本のスーパーでの販売面積はあまり広くないように感じます。
 左の写真にあるマークをよく見かけました。写真はフランスで見かけた有機の牛乳ボトルですが、黄緑色のマーク2つの内、左の“ABマーク”はフランス政府の認証マークで、右の“リーフマーク”はEUの認証マークです。
 購買欲と販売価格には関連があるように感じますが、これら所謂“意識高い系の食材”は、価格が若干高めです。しかし、私がここ1~2年に訪れたフランス・スペイン・イギリス・ニュージーランドでは、日本より販売面積が広く、ニーズが高いのかな?と感じました。
 有機に関する海外と日本の考えの違いには、国土の広さや農地面積も関連があるでしょうし、それに伴う食料自給率とも関連があるでしょう。有機商品を輸出する事で他の商品との差別化が出来るということもあるでしょう。
 いずれにせよ、私は今のところ“意識高い系の食材”をお勧めしようとは考えていないのですが(例え勧めたとしても、なかなか受け入れられない日本の現状もあるため)、最近 “!!” と感じる事があったので、今回のテーマにしたいと思います。

・グラスフェッドに対して、私が“!!”と感じたきっかけ
 今年の初めに放送されたNHKスペシャル“食の起源”の第③集“脂”をご覧になりましたか?
                    (https://www.nhk.or.jp/special/shoku/series/03/
  この番組で、餌に違いによって牛肉の脂肪の成分に違いがあるということに私は驚きました。                    
              (https://www.nhk.or.jp/special/plus/articles/20191226/index.html/

 私が気になった部分を切り取ると…
・穀類の多い餌で育った牛(グレインフェッドビーフ)と、本来の牛の餌である牧草で育った牛(グラスフェッドビーフ)の脂肪の融点が異なる。
・餌により、オメガ3系とオメガ6系の精肉の脂肪分の割合に違いがある。
(オメガ3系:オメガ6系)グレインフェッドは1:8~1:10に対し、グラスフェッドは1:2。

 私はこの番組を見て、狂牛病がニュースになった時の事を思い出しました。元々牛は草を食べているのに、骨粉を食べさせるなんて、そもそも不自然だ!なんて話題になりましたよね。
 牛は本来の餌である牧草を食べた方が自然なのでしょうね…。

・やっぱり魚を食べよう!
 肉(の脂肪分)のとり過ぎは動脈硬化のリスクを上げ、身体にとって良くない。魚の脂肪分は人にとって良い脂という事は知っていましたが、食べる餌によって、脂肪の成分がこんなに大きく変わる事に驚きました。
しかし、よく考えると私達人間も同じだなと感じます。口にする脂肪の種類によって、生活習慣病のリスクに違いが出るという事は分かっていますものね。
 アマニ油・エゴマ問題(https://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/4392/)のコラムで、以下の表を私は提示しています。

 オメガ3系とオメガ6系の脂肪酸の割合は1:2が理想ですが、オメガ6系がずっと多いのが現状です。
 肉の種類をグラスフェットにした方が良いのではないか?とも感じますよね。
 オメガ3系の脂肪を勧めるあまり、グラスフェッドのバター・アマニ油・エゴマ油を商品として勧める風潮もありますが、どの脂質も熱量(カロリー)という観点では同じです。とり過ぎは、エネルギー量のとり過ぎになるため、やはり私は今のところ、これらの商品を積極的に食べよう・勧めようとは思いません。
 私なら、こうお勧めします。
 オメガ6系を多く含む食品には、調理で使用する油が多い。そのため、これらの調理油を控えめにし、おかずに肉より魚を食べませんか?

・魚が嫌いな方に、私が感じている事。
 私がよく耳にする魚を食べる習慣の少ない方や、魚が好きではない方の意見です。
 ①魚のさばき方が分からない。さばくのが面倒だ。
  ②魚臭さが好きじゃない。
   ③魚の料理は面倒だ。
    ④魚料理は食べるのが面倒だ。(きっと小骨のある魚)
     ⑤肉の方が美味しい。

私は、心の中でこんな事を呟いています。
 ①さばくのが難しければ、切り身を使用するところから始めてはどうか?
 ①魚屋さんにさばくのをお願いしてはどうか?
 ①肉は、精肉加工工場の方がさばいてくれているのです…
  ②新鮮な魚は、そんな臭くないのに。
  ②食べ慣れないから、臭みを感じるのではないか?
     (私が子どもの頃、肉類に獣臭さを感じていたな…)
   ③刺身は料理しなくて良いのではないか?
   ③缶詰の魚料理は、結構美味しいですよ。
    ④魚を食べる習慣がない方にとって、魚丸ごとの焼き魚はハードルが高いな。
    ④でも、美味しさを知ったら小骨の面倒くささは感じないだろうな…
    ④サンマの生姜煮は絶品ですよ…(https://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/3006/参照)
     ⑤脂肪分の多い肉に美味しさを感じているのだろうな。魚も美味しいですよ。
そして、私はこのようにも感じています。
 豚肉・牛肉・鶏肉に旬はありませんが、魚には旬がありますよ。年中、色々な魚を楽しめますよ。

 “意識高い系の食材”を購入するという日本人が多くない事+日本は海に囲まれている”という環境の日本だからこそ、グラスフェットビーフやバターを勧める前に、魚を食べる事を推奨したいなと感じますが、皆さんはどのように感じますか?

 

 

◆執筆者:河谷彰子氏
管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ女子代表栄養アドバイザー及びアカデミー(男女)栄養アドバイザー
湘南ベルマーレ育成 栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師・上智大学非常勤講師
日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。
URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm