牡蠣とノロウイルス(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)

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牡蠣を初めて食べた時、生食用の牡蠣を1個だけ生食した、次の日に嘔吐・1
下痢・腹痛の症状が出て、あたった事があります。今思えば、ノロウイルスだったのではないかと感じています。
あたったにも関わらず、私は牡蠣を食べますが、食べる時は“あたりませんよ~に。”と祈りながら、美味しくいただきます。
11~3月頃に多く発生しやすいノロウイルス食中毒ですが、原因である食材の代表として二枚貝があります。そして生食する事の多い牡蠣は特に有名です。今回は牡蠣について触れてみたいと思います。

生食用の牡蠣と加熱用の違いは?

“今夜は牡蠣鍋!”という時、皆さんは“生食用”“加熱用”のどちらの牡蠣を購入1
しますか?
生食の方が若干、価格は高いですよね。
ちなみに、違いは鮮度ではないんです。
生食用の牡蠣は
・保健所が定めた大腸菌数が一定数以下の水質基準を満たした海域で獲れたもの。
・滅菌処理をした水、もしくは大腸菌数が一定以下の海水の中で2~3日間の断食をしたもの。

牡蠣は1日に300ℓの海水を吸い込んで、プランクトンをはじめとする様々な成分を取り込みます。河川を通して、山からの栄養成分が運ばれた海域では、牡蠣の成長も良く、含まれるグリコーゲンも多くなるため美味しくなります。しかし、この海域は雑菌も多くいるため加熱用の牡蠣になります。
沖合に出ると水質が良くなるため、雑菌は少なくなりますが、牡蠣の成長や美味しさは落ちてしまいます。さらに、2~3日、断食をしているため、蓄えていたグリコーゲンが消耗してしまい、身が痩せてしまい美味しさがさらに落ちてしまいます。
結果、鍋用として加熱して食べる場合は加熱用の牡蠣の方が美味しいと言えるのです。

美味しい牡蠣のポイントは、色が黄色っぽい物・貝柱の下がふっくらした物の方がグリコーゲンをため込んでいて美味しいです。

二枚貝とノロウイルス対策

一般的にノロウイルス対策の加熱のポイントは“85~90℃ 90秒以上”と言います。
牡蠣の場合、85℃以上で中が完全に固まります。加熱用の牡蠣で加熱させた料理を食べる際に、半生だとノロウイルスの危険があるという事です。
牡蠣鍋を作る場合、牡蠣以外の具材を先に入れて煮て、牡蠣は最後に入れるのが美味しいポイントです。沸騰した中に入れて8分加熱が目安です。
(人差し指の長さより大きい牡蠣(25g以上)は9分が目安。 ガッテン2016年2月10日よりhttp://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20160210/index.html

使用した調理器具もしっかり殺菌!

調理器具はたっぷりの水で流した後に、中性洗剤をつけて洗い、しっかり流した後に熱湯を1分以上かけるか、0.02%次亜塩素ナトリウムで約10分浸して水洗いしましょう。最後には、シンクもしっかり洗浄しましょう。1
次亜塩素ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。漂白剤を使用した、0.02%次亜塩素ナトリウムの作り方は右表の通りです。

美味しく安全に牡蠣を食べましょう。

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ  アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm