イギリスの卵で、卵かけご飯を食べれるようになった!
アスリートの海外遠征に帯同し、食事作りをする中で、日本との環境の違いで不便だなと感じる点がいくつかあります。
・美味しい米がなかなか手に入らない。また、売っていても少量且つ高価である。
・豆腐や納豆は便利なたんぱく質源なのに、ヨーロッパではなかなか手に入らない。
・魚の種類が少なく、売っていても日本で目にする魚とは異なる種類が売っている。
・卵はサルモネラ菌の影響から、生卵・半熟卵・温泉卵等が提供できない。
・彩りや栄養素を考え、小口切りにした葉葱を使いたいのに、ヨーロッパでは、なかなか手に入らない。
・和食の野菜の煮物を作りたいが、食材がそろわない。(大根・干し椎茸・こんにゃく・筍・ごぼう等)
等です。
・卵とサルモネラ菌 (見た目や匂いで分からないからこそ気を付けたい食中毒についてhttps://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/1300/より抜粋)
日本では卵のパックに生食で食べられる賞味期限が記載されています。
一方で、海外の場合は国によって異なりますが、賞味期限が1~2か月ほどあります。これは加熱して食べるのに安全な期限です。
卵の食中毒の原因の多くはサルモネラ菌によるものです。
卵の保存状態が良くない、卵を使用した料理の保存や食べる直前の加熱が不十分等の理由により食中毒になってしまう事があります。
サルモネラ菌の食中毒の予防方法について、公益社団法人日本食品衛生協会では、以下のように記載しています。(http://www.n-shokuei.jp/eisei/sfs_index_s01.html)
•卵を生食する時は、新鮮で殻にヒビがないものを冷蔵庫に保管し、期限表示内に食べます。
•卵を割ったら、直ちに料理します。割ったまま、保存することは避けましょう。
•肉や卵は、冷蔵庫で保存し、料理する時には、十分に加熱します。
•調理器具はよく洗浄し、熱湯などで消毒します。
•ペットに触れた後は、十分に手洗いします。
•ネズミ、ゴキブリなどの駆除を実施します。
・卵かけご飯が出来る国、日本!
日本の場合は、鶏がサルモネラ菌に感染しないように抗生物質やワクチン、抗菌薬などが鶏の餌に混ぜられている他、鶏舎の環境が整えられていたり、流通される際にも、洗浄・殺菌が行なわれる等、品質管理が徹底されている為、生食が可能です。
海外では一般的に卵は加熱を基本とした食材という認識です。
(一部の卵が特殊な殺菌方法を用いる事で生食可能)
そのため、これまで私が出会った外国人アスリートは、日本の生食可能な卵の存在は知っていても、生食の習慣がないため、半熟の目玉焼きは嫌がりますし、卵かけご飯を食べる習慣はありません。
最近、テレビのニュースで日本の卵が輸出され、人気だと見た事があります。それくらい、日本の卵は特別な環境で管理された食材だという事ですね。
・卵の凝固と温度の関係
今年に入り、私はスペイン・イギリスと海外遠征に帯同し、料理を力いっぱい作っていたのですが、その中で卵は手軽なたんぱく質源として大量に使用しました。
スクランブルエッグ・炒り卵・卵焼き・スペイン風オムレツ・キッシュ・フレンチトースト・蒸し玉子・ゆで卵・卵入り中華スープ・プリン…
卵を使用した料理は、とにかく十分加熱したかを気にしていました。つまり、サルモネラ菌対策として、料理の中心温度が75℃1分以上になっているかを気にしていたのです。
温泉卵を牛丼に乗せたら選手は喜ぶだろうな~と何度も頭を過ぎりましたが、ここは日本ではないからと、提供しませんでした。
卵の凝固温度は、卵黄65~70℃・卵白は75~78℃です。
卵白の方が固まる温度が高いです。
目玉焼きを作る際に、さっと焼くと卵白に卵黄が包まれているため卵黄の中心まで熱が伝わらないので半熟になります。
一方温泉卵は65~70℃の低い温度帯で約30分浸けておくと完成します。
もう少し詳しく温度と状態を説明すると…
温泉卵は、卵黄の粘性が高まり、白身はゼリー状です。温泉卵が完成する温度帯はサルモネラ菌対策の温度帯にはなっていないため、海外の卵で温泉卵は、食中毒が心配です。
・2017年10月から、イギリスの卵も卵かけご飯にできる!
とにかく、選手が食中毒にならないよう、衛生管理に努め、全ての食事提供が終了し、帰国するとなった時、ロンドン在住の友人が“最近、イギリスの卵も卵かけご飯が出来るようになったのよ~”と教えてくれて、とても驚きました。
調べてみると・・・
2017年10月12日のBBCニュースに“英国産の卵に安全宣言 サルモネラ騒ぎから約30年” とありました。(https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-41594387)
右のライオンマークがついていると、サルモネラ菌の汚染がないのだそうで、イギリスで生産されている卵のほぼ全てがこのマーク付きだとあるではないですか。
確かにイギリスでは、卵のパックにライオンマークがついていましたし、卵1個1個に赤くライオンマークと数字の判が押されていて、不思議に思っていました。
イギリス遠征では、生食が可能な卵が手に入っていたのだから、選手に温泉卵や半熟卵を提供すれば良かった…とリサーチ不足を悔やんだ私でした。
これまで卵についての情報は以下の通りです。
・コレステロールの値が高いから、卵は控えています。はもう古い考え(https://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/2440/)
・身近な食材“卵”には??がいっぱい(https://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/2465/)
◆執筆者:河谷彰子氏
管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師
日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。