浦島太郎は、竜宮城にどの位滞在したのか?
亀を助けたお礼に、竜宮城へ招待してもらった浦島太郎。お土産にもらった玉手箱を開けるとお爺さんになってしまったというおとぎ話。
この話を生理学的に斜めから見たら…。
何故、浦島太郎は竜宮城から帰ってきたら、お爺さんになったのでしょう?
竜宮城には、どの位の期間滞在していたのでしょう?
・歳のせいか?
私が20歳台の頃、ダイエットの栄養相談で年上の方々から、よくこのようなことを言われました。
「歳のせいで、太ってしまった…」
「30歳を過ぎると、太るのよ。あなたもその内、分かるわ。」
私は心の中で“そうかな~歳のせいかな~?それ以上に太ってしまった影響力のあることがあったのではないかな~?”と感じていました。
加齢に伴い筋力が衰えることは、勿論知っています。しかし、30歳台で、年齢のせいで太るという加齢の影響力はとても小さいと、今なら断言できます。さらに、もう少し上の年代の場合、加齢に伴う身体機能の低下を少しでも防ぐために出来ることがあるのではないか?また、体脂肪が増えすぎないように、運動や食事を気にしていくことで、何とかできるのではないか?と感じます。
若かった私は、年上の方々へ歳のせいにする前に出来ることはないか?という提案が上手にできなかったと今振り返っています。
・貯筋が大切。
“貯筋”という言葉をご存知ですか?
この言葉の生みの親は福永哲夫先生(東京大学名誉教授・鹿屋体育大学前学長)です。
私が大学生の頃、よく東京大学へ勉強しに行き、それをきっかけに私は大学院に行くことを決めたのですが、その頃お世話になっていた先生方のボスが福永先生でした。
最近、ひょんなことから福永先生とお話しする機会が増え、ある日先生が私にクイズを出題しました。
「浦島太郎は竜宮城に行きましたが、どうしてお爺さんになったのでしょう?そしてどの位の期間、竜宮城に滞在していたのでしょうか?考えてみて。」
全く分かりません…
こっそりネットで調べてみると…ありました!その答えが!!
(柔整ホットニュース https://www.jusei-news.com/kaigo/topics/2019/05/20190508_01.html)
・竜宮城は海中なので、無重力に近い状態である。
・宇宙飛行士を調査したところ、宇宙に1週間滞在したら7%ダウン、2週間で15%ダウンして
いた。
つまり、無重力状態では1日に1%ずつ筋肉量が減っていた。
・陸上の場合、1%の筋量低下は1年かかる。(24時間寝たきりだと、2日で1%落ちる。)
・もし浦島太郎が30日間竜宮城に滞在していたら、30%の筋量が低下することになる。
・浦島太郎の年齢が30歳だったら、30日間の竜宮城滞在で、陸に戻ってきた筋量レベルは
60歳である。
面白い!
加齢とともに筋量は落ち、それに伴い筋力が落ちてしまうのはやむをえませんが、筋力の低下が少しでもなだらかになるように出来ることをしていく必要があるのではないでしょうか。
特に歩行や階段を上る等の日常生活動作に大切な大腿四頭筋(太ももの前側)の筋肉量を落とさないことが大切だと、この記事で福永先生もお話しされています。
福永先生の体力・筋力には驚かされることが多いため、先生に伺ったところ、
「毎朝、朝食前に30~40分、マンションの階段を降りて、1階でストレッチして、また自宅のある階まで階段で上っているだけだよ。」とお返事をいただきました。と言っても、先生のご自宅は5階とか7階ではなく、かなりの上層階です。(そして、ゴルフにもよく行かれているとのことです。)
私の母は、50歳台から健康のために早歩きをはじめ、さらには60歳台でホノルルマラソンに出場することを毎年の楽しみにしていました。その後、今でも毎日午前中に1万歩を歩いています。それは素晴らしいのですが、そのウォーキングコースが平坦な道ばかりなことが私はずっと気になっていました。
私は早速、母にこう伝えました。
「福永先生は、毎朝、階段を往復していらっしゃるって。貯筋よ!貯筋が大切だから。」
その後、母は、自宅マンションの階段をなるべく使うようにするようになったようです。(5階分ですが)
貯筋運動について、紹介しているホームページがあります。ご興味のある方は、こちらをどうぞご覧ください。
(公益財団法人 健康・体力づくり事業財団 http://www.health-net.or.jp/tyousa/tyokin/douga.html)
・健康加齢 そして 健幸華齢。
私の大学院時代の恩師 田中喜代次先生(筑波大学名誉教授)は、体力や血液データから“活力年齢”を算出する計算式を編み出した先生です。暦の年齢よりも活力年齢が若いことが理想であり、生活習慣や運動習慣等の色々な因子が関連します。
活力年齢について記載のあるホームページはこちら
(メディアミルクセミナー https://www.j-milk.jp/report/media/f13cn00000000v7a-att/berohe000000k1nr.pdf)
大学院生時代、日本のみならず、海外でも多くの高齢者の体力測定を実施し、先生から、そして高齢者の方々から、多くのことを教えていただきました。
田中先生が以前、このようなことをお話しされていました。
“若さを保つ(若返る)ためのポイントは、食事7~8割・運動2~3割で続けられる方法を見つけましょう。 ”
そしてそのポイントは
“・食生活に注意する。・身体をよく動かす。・血圧を正常に保つ。・コレステロールや中性脂肪を正常に保つ。・太らない。”
年を重ねても健康に日常生活を自立して過ごすことが大切であり、先生は“サクセスフル・エイジング”という言葉を使うこともありますが、健康加齢を“健幸華齢”とも表現しています。
(日本健康応援サイト “健幸華齢に生きるために(前編)(後編)”
http://www.kenkohub.jp/successful-aging/2019/post-2268/
http://www.kenkohub.jp/successful-aging/2019/post-2287/)
学生時代、先生から“体育の学者は、何でもかんでも運動が良いと言いがちだが、そうではない!”とお話しされていましたが、確かにそうだなと感じていました。
学生時代・そして卒業してからも、先生の考え方に共感し、先生に何度も『先生の研究室で勉強して本当に良かった。』とお伝えしたことがあります。体育の分野の先生が、運動よりも食事の割合が多いことを提案するというところに、再度共感しました。
運動というとハードルが高くなるので、私はあえて“身体を動かす”という表現にしますが…
身体を動かすと ⇒ 食欲が湧きやすい。 = 必要な食事量をとることができ、筋量を保てる。
身体を動かすと ⇒ 筋肉が刺激される。 = 筋量を保てる。
年齢のせいで筋肉が落ちる以上に、動かないことが急激に筋量を落としてしまいます。
このコロナ禍で、浦島太郎状態にならないようにしたいところです。
食事については、またの機会にお伝え致します。
◆執筆者:河谷彰子氏
管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ女子代表栄養アドバイザー及びアカデミー(男女)栄養アドバイザー
湘南ベルマーレ育成 栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師・上智大学非常勤講師
日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。
URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm