小中学生のスポーツキッズにサプリメントの必要性が見当たらない。(執筆者:管理栄養士・体育学修士 河谷彰子氏)

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スポーツキッズを対象としたセミナーで、親御様からサプリメントについて質問さ1
れる事があります。スポーツ用品店のサプリメント売り場には、色々な種類のスポーツキッズを対象としたジュニア用サプリメントが販売されるようになりましたね。
スポーツをしている方の食事の一部にサプリメントが必要であると過剰に思い過ぎではないか?とよく感じます。
色々な観点からスポーツキッズとサプリメントについて考えてみました。

たんぱく質はエネルギー不足ではエネルギー源として使用される。

身体を動かすために必要なエネルギー源は主に炭水1
化物・脂質が使用されますが、エネルギー補給が不十分だと、たんぱく質も使われてしまいます。
(エネルギー(kcal)=たんぱく質(g)×4+脂質(g)×9+炭水化物(g)×4)

小中学生の1日の食事量の目安は右表の通りです。

身体を動かしている分、消費エネルギー量が多いため、それに伴い必要な食事量が増えます。
しかし、身体を動かした後はお腹が空くので、間食内容が食事の一部になる物であれば良いと考えれば良い程度です。
ご飯250g(おにぎり2.5個分)には卵1個分のたんぱく質が含まれています。

成長に伴って筋肉量が増加し、そしてトレーニング量も増加するため、食事量は増えていきます。
小中学生の内から、サプリメントに頼るような食事では、その後が色々と心配です。

 

食の基本を見に付ける時期だからこそ!

サプリメントを検討されている親御様の中には、子供の食が細いためサプリメント1
で!と考えている方がいらっしゃいます。
食事に興味がなくて少食だという場合は、食自体に興味を持つよう仕掛けなければいけません。
3食で必要量を食べられない場合は、3食にこだわらず食事回数を増やす必要があります。だからお菓子ではなく補食が必要になります。

“運動後なるべく早いタイミングでたんぱく質をとると良い”だから“トレーニング後にプロテインを飲んでいる”という習慣はジュニア期から必要でしょうか?
特に食の細い子は、プロテインを飲む事で、その後の食事が食べられなくなってしまいます。

コンビニを利用する年代であれば“運動後なるべく早いタイミングで食事をする”だから“部活後におにぎりと牛乳を飲む”という方が健全ではないでしょうか?

リハビリ中、筋トレはできるけれどケガの影響で走れない(=消費するエネルギー量がいつもより少ない)というケースがあります。けれど、筋トレ後のプロテインは欠かせない。何故なら、プロテインを飲まないと筋肉が落ちてしまうと思っているからという高校生以上のアスリートをよく目にします。
しかし、消費エネルギー量が減少すれば必要な摂取エネルギー量は減少しますし、それに伴って必要なたんぱく質量も減少します。場合によっては、とり過ぎたプロテインが余分な体脂肪となってしまい、特に体重がかかる部位のケガの場合は復帰が遅くなってしまい兼ねません。
食事の基本を身に付ける時期である小中学生には、状況に応じて、臨機応変に状況判断が出来るように周りの大人が環境を整えたり、情報提供をして欲しいなと感じます。

右表は、小中学生のエネルギー量と運動系1
の部活に入っている等、活動量が多い小中学生に必要なたんぱく質量の目安量です。

エネルギー量に対するたんぱく質の比率は運動を積極的に実施していない方と大きな違いがありません。
違いは必要なエネルギー量が違う点と、それに伴いビタミン類も増えてくるという点です。つまりご飯量が増え、それに伴いおかずや乳製品・野菜も増えるという事です。

中学生の食事例
 朝    :玄米入りご飯(250g)+目玉焼き(卵1個分)+ほうれん草ソテー+野菜スープ+牛乳(250cc)
 昼    :玄米入りご飯(250g)+肉巻き野菜(豚肉80g)+厚焼き玉子(卵1/2個分)+野菜炒め
            +ひじきの炒り煮
 間食:サケ入りおにぎり1個(ご飯100g)+フルーツヨーグルト(ヨーグルト100g)
 夕食:玄米入りご飯(250g)+ぶりの照り焼き(100g)+根菜の煮物+味噌汁(豆腐入り)
            +牛乳(250cc)

(計:エネルギー:3,044kcal たんぱく質:126.2g)

いかがでしょうか?食べられない量でしょうか?サプリメントが必要でしょうか?

 

子供は代謝や排尿が未発達だからこそ気を付けたい。

サプリメントは食材と違って、たくさんの栄養素が1
良くも悪くも凝縮しています。
栄養不足を心配するあまり、サプリメントをとっていると過剰症が心配です。(右表参照)

特にジュニア期は代謝や排泄が未発達のため、場合によっては腎機能や肝機能の障害が出てしまう恐れもあります。又、常用している薬がある場合は薬の作用を阻害させてしまうこともあります。サプリメントを使用する際は必ず担当のお医者様に相談しましょう。

欧米先進諸国の見解では、食事で十分に栄養がとれている選手がサプリメントをとったとしても、パフォーマンスが有利に働くという科学的証拠はないとしています。また、アメリカ栄養士会では、子供のサプリメント摂取を控えるよう促しています。

スポーツキッズのみならず、子供達がサプリメントを飲むきっかけのほとんどは大人の影響です。
そして、栄養素の名前は知っているけれど、その栄養素がどの食材に多く含まれているかはあまり知らないという大人も多いように感じます。
身体に良いからというメディア情報を過信してサプリメントを使用するより、気にした方が良い事があるのではないかな?と思う今日この頃です。

 


◆執筆者:河谷彰子氏

管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ  アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師

日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻、筑波大学大学院で体育研究科コーチ学を専攻後、運動指導及び栄養カウンセリング、食サービスの提案を行う、ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。

URL:http://www.kouenirai.com/profile/2448.htm